人気女優のシン・ヘソンと言えば、「いつもドラマに出ずっぱりになっている」という印象がある。常に継続して主演作が途切れず、ほとんど休んでいない感じだ。「それだけ女優として需要がある」というのは彼女の努力の賜物であり、本当に頭が下がる。
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そんな彼女の主演作は山ほどあるが、時代劇に特化して「この1本!」と選び抜いたら、やっぱりこのドラマがピカイチではないだろうか。そう、『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』だ。
このコミカルな時代劇は、シン・ヘソンとキム・ジョンヒョンが持ち味を十二分に発揮していた。2人は王宮の中で予測不可能なラブロマンスを繰り広げていたのだが、物語のスタートは、現代の青瓦台(大統領官邸)で始まっていた。
そこで働くシェフ、チャン・ボンファンの魂が、朝鮮王朝の後期に存在した王妃キム・ソヨンのからだに宿るという、信じがたいシチュエーションが『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』のメインストーリーになっていた。
劇中に登場するキム・ソヨンは、歴史上の哲仁(チョリン)王后のことだ。この王妃をシン・ヘソンが「男の感情になりきって」熱演している。さらに、王妃の夫である哲宗(チョルジョン)についてキム・ジョンヒョンが極端に真面目に演じている。そこにはどこかペーソスがあって愉快だ。
やはり、物語の主要人物として哲宗を取り上げたところが『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』の斬新な点だった。史実の彼が歴史の表舞台に突如現れたのは1849年のことだ。24代王である憲宗(ホンジョン)が急逝し、後継者不在の騒動が起きていた。
息子がいなかった憲宗の後に、田舎で農業に従事していた無学の青年が急に国王に指名された。その青年が哲宗であり、彼は「棚からボタ餅」のようにして王になった。
『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』は、そんな王の正室だった哲仁王后を題材にしているため、王妃の存在感が非常に際立っている。さらに、現代のシェフの魂が王妃に宿るため、王宮は前代未聞の大騒動に巻き込まれる。
このように、『哲仁王后~俺がクイーン⁉~』は歴史と現代を巧みに織り交ぜ、強烈なキャラクターと予測不可能な展開で視聴者を魅了する。それぞれの時代を生きるキャラクターたちが見せるコミカルな物語は、まさに腹がよじれるほどの笑いを与えてくれる。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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