テレビ東京で放送中の『赤い袖先』は9月26日の第18話で大きな転換点を迎えた。イ・ドクファが演じた英祖(ヨンジョ)が亡くなり、イ・ジュノが扮するイ・サンがいよいよ正式に即位したのだ。
ドラマは、英祖の服喪期間が終わり、立派な君主として政治に邁進しているイ・サンの様子が生き生きと描写されていた。そのイ・サンの姿を崇めながらソン・ドギムは自分の務めを忠実に果たしていた。
そんな彼女を見つめるイ・サンの眼差しは、愛情にあふれたものだった。世孫から国王に変わったとしても、彼の気持ちはまっすぐだった。いつまでも宮女であるソン・ドギムにあふれる愛情を素直に注いでいた。
その上で彼はソン・ドギムに側室になってほしいと願い出た。すぐに返答を求めることはしなかった。少し時間をかけてゆっくり考えてほしい、という姿勢であった。
本来、国王であれば寵愛する女性を側室にするのは容易なことだ。しかし、イ・サンは強制的な手段を取らなかった。あくまでも相手の女性の自立心を尊重する姿勢を見せたのだ。
『赤い袖先』というドラマはいつも、宮女の人生を優しい視点で描いている。宮女を決して王族たちに従属される存在ではなく、個性的なキャラクターとして扱っている。こういう見せ方は今までの時代劇にはなかった。従来は朝鮮王朝の制度の仕組みの中で時代劇が作られていって、宮女の個性が目立たない部分が多かった。
しかし、『赤い袖先』の表現スタイルは違っていて、登場人物の個性を尊重していた。そして、ソン・ドギムこそが自分の人生を大切にする「自立した女性」として描かれており、国王がその人生を尊重していた。そういうドラマにおいて、国王を演じるイ・ジュノの表現力はどうであったか。
彼は感情の抑揚を押さえ気味にして、口元を引き締めて物事に対処していた。しかも、繊細な演技にもキラリと光るセンスを見せてくれた。そのおかけで、真摯な態度の国王の姿をドラマの中で存分に見ることができた。
今後の展開でイ・サンがソン・ドギムの自立性をどう受け止めるのか。そういうところも大いに注目される。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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