朝鮮王朝後期の名君を描いた『イ・サン』を見ていると、主人公のイ・サンを演じたイ・ソジンが素晴らしい演技を見せており、堂々たる風格を大いに感じさせていた。
特に、イ・サンが即位した後も政治上の難問に対応する際の思慮深さは、イ・ソジンの演技力があってこそ表現できるものだ。この時代劇が傑作として評価が高いのも、イ・ソジンの本領が十分に発揮されているからだろう。
この『イ・サン』は2007年から2008年にかけて韓国で放送されたドラマで、イ・ソジンが演じたときは36歳だった。それから彼は俳優として様々にキャリアを重ねてきたが、最近の主演作といえば、韓国tvNで2022年11月と12月に放送された『エージェントなお仕事』が記憶に新しい。
このドラマは、所属している俳優の言動に翻弄される芸能マネージャーの奮闘を描いているのだが、イ・ソジンが扮しているのは芸能事務所「メソッドエンターテインメント」の理事マ・テオである。
このキャラクターは、どうも捉えどころがない。芸能事務所のオーナーが急死したあとに経営者として会社存続に向けて一応は奔走していくが、その一方で、ライバル事務所への移籍に関心を示したり新人女性社員との「親子疑惑」が取りざたされたりしてしまう。
はっきり言って優柔不断である。いわば、確固たる信念を持ったキャラというよりは、周囲に振り回される人物像とも言える。俳優は任された役に全力投球するのが本分とはいえ、イ・ソジンが『エージェントなお仕事』で演じるマ・テオは、『イ・サン』のときの思慮深いイ・サンとは対極にいる人物設定かもしれない。
しかし、ダメ男を演じるときのイ・ソジンには味がある。揺れる感情をハラハラさせるように見せてくれるからだ。
やはり、彼の演技力は折り紙つきだ。『エージェントなお仕事』でイ・ソジンが演じるマ・テオがトラブルに見舞われる度に、見ていてニヤリとしてしまう。縦横無尽のイ・ソジンが「硬派」ではなく「軟派」を演じているときでも、とてつもない説得力があるのだ。そのおかげで、『エージェントなお仕事』はとても面白いドラマに仕上がっている。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【ドラマ解説】政治改革への道のりと重責!イ・サンの苦悩と挑戦の物語
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