韓国の著名な俳優は大学の演劇・映像関連学科を卒業している学歴を持つ例が多いのだが、その中でもイ・ソジンは異色だ。彼は高校からアメリカに留学してニューヨーク大学経営学科を卒業している。その学歴はとても有名であり、彼は俳優になってからも「有能なビジネスマン」を思わせる知性と判断力を存分に見せてくれた。
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たとえば、『イ・サン』で見せた演技……常に暗殺の危機を背負っていた世孫(セソン/国王の後継者となる孫)が数々の困難に打ち勝ってやがて立派な名君になる、という成長物語はイ・ソジンのキャリアにピッタリな役柄であった。
実際、名君になった後も政治上の難しい問題に対処するときの思慮深さは、演じるイ・ソジンの懐の深さを実感させた。『イ・サン』が時代劇の傑作として今も高い評価を受けているのは、ひとえにイ・ソジンの演技力の賜物であった。
それから15年。イ・ソジンは今度『エージェントなお仕事』の理事マ・テオの役を演じた。創業者が急死してピンチに陥った芸能事務所をどのように立て直すのか。イ・ソジンが演じるマ・テオが経営的な手腕を発揮するのだろう、とドラマを見ていて予想していた。
しかし、「あれ?」という展開になってしまった。
結局、マ・テオは経営にタッチできず、隠し子騒動で妻からも離婚をつきつけられ、所属俳優のマネージメントでもミスを重ねた。最後に起死回生の逆転劇を見せるはずだと期待したが、それもなかった。結局、『エージェントなお仕事』でイ・ソジンは演じた役で「ニューヨーク大学経営学科卒業」のキャリアを見せることはできなかった。
しかし、『イ・サン』と『エージェントなお仕事』にはイ・ソジンの演技に明確な共通点があった。それは、苦境に陥ったときの深く沈思黙考する姿だ。そのときの表情は二つのドラマで驚くほど似ていた。本人が演じているのだから似ていて当たり前なのだが、15年の年月を経てイ・ソジンの「沈思黙考する姿」を再び見られたのは本当に良かった。
やはりイ・ソジンは、思索する演技が本当に絵になる俳優だと改めて思えた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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