韓国JTBCで放送された『愛と、利と』では、ムン・ガヨンが演じたヒロインのアン・スヨンが際立った存在感を見せていた。彼女の特徴は「冷たい眼差し」。果たして、それは誰に向けられていたのか。
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何よりも、アン・スヨンが育ってきた環境が特異だった。彼女は地方の港町で育ったのだが、高校時代に親の浮気が発覚し、さらに一番愛する弟が亡くなってしまった。この二つの出来事はアン・スヨンの人生に決定的に暗い影を落とした。
ソウルに出てきたアン・スヨンは、KCU銀行の支店に勤務するようになった。銀行員としても非常に仕事が出来て顧客からの信頼も厚かった。しかし彼女は契約社員。他の正社員とは待遇がかなり違っていた。
例えば重要な顧客が来るとすぐに他の人に担当を替えさせられてしまう。これは彼女にとっては大きな屈辱であった。そんなアン・スヨンに好意を寄せていたのが、ユ・ヨンソクの演じるハ・サンスであった。
二人はデートの約束をしたのだが、たまたま起こった銀行のトラブルでハ・サンスが大幅に遅刻をして、結局はアン・スヨンが帰ってしまった。以後のアン・スヨンはハ・サンスを無視するようになり、銀行で警備員をしていたチョン・ジョンヒョン(チョン・ガラム)との同棲を始めた。
一方のハ・サンスは大学時代の後輩だったパク・ミギョン(クム・セロク)と恋愛関係になる。それでもハ・サンスはどうしてもアン・スヨンのことが忘れられない。そのために彼はアン・スヨンの行動をいつもチェックして彼女の気持ちを知ろうとするが、アン・スヨンはハ・サンスに対して「冷たい眼差し」を向けていた。
それは彼だけではない。アン・スヨンは自分が置かれた立場を考えても、「温かい眼差し」を職場の誰にも向けることができなかった。
彼女は支店の中で間違いなく孤立していた。支店長からセクハラを受けたり、転属希望を願い出ても受け入れられなかった。結果的に、支店の中で便利屋として難しい業務を次々に押し付けられていく。これではアン・スヨンも素直にはなれない。
元は本当に優しくて他人への心遣いができる女性なのだ。それは顧客に対する丁寧な対応を見ていればよくわかる。しかし、人間関係においては自分の心をなかなか開かないところがあった。それは高校時代の辛い経験が影響していた。
結局、アン・スヨンは何をするかわからないミステリアスな女性として描かれることが多かったが、素のアン・スヨンは自分を守るためにあえて「冷たい眼差し」という鎧を被っていなければならなかった。そんなアン・スヨンをムン・ガヨンは繊細な表情で演じきって、ドラマを魅惑的に彩っていた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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