これまで奇想天外なストーリーを数多く生み出してきた韓国ドラマの世界でも、Netflixオリジナルで制作された『イカゲーム』は突拍子もなく変わった作品だ。
「よくもこんな話を思いつくなあ」
そう感心している内にどんどんドラマの中にのめりこんでしまう。
描かれている世界とは一体?
まず、多額な借金を背負っていて人生のどん底であえいでいる人たちに少々の金をもたせて勧誘し、400人以上が1カ所に集められる。その末に、生き残ったら莫大な賞金をもらえるという条件で、奇怪なゲームが始まっていく。
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最初は「ダルマさんが転んだ」といった子供の遊びだ。制限時間のうちにゴールにたどり着いた人は生き残るが、ゴールに行けない人やルールを破った人は、なんとその場で射殺されてしまう。
まさに、命をかけた恐ろしいゲームなのだ。
なぜ、参加者は死と直結したゲームに取り組まなければならないのか。
確かにこのゲームは地獄そのものだが、参加者は社会の中でもみんな地獄を見てきた人ばかり。結局、社会に戻って現実的な地獄を再び味わうか。あるいは、死を賭けたゲームに挑んで莫大な賞金を取る道を選ぶか。こうして、社会で生きていけない人たちがゲーム続行を選択して、死ぬまで次々と子供の遊びを模した「死のゲーム」に必死で取り組んでいく。
そんなストーリーには、目をそむけたくなる場面が多い。人が簡単に殺されていくし、暴力シーンもとても目立つ。
エンタメだと知りながら気分が悪くなってくる人もいるだろう。
途中で見るのをやめようかな、と思いたくなるときもある。
しかし、結局は続けて見てしまうし、次回が早く見たくなる。
世界を覆っているコロナ禍の中で、誰もが閉塞感を抱えて生きている。そんな現在にあって、『イカゲーム』は混沌とした世界の暗示かもしれない。
もちろん、ドラマそのものは本当によく出来ている。卓越した脚本、スリル満点の演出、イ・ジョンジェを初めとして粒ぞろいの出演者たちの演技もとてもいい。
『イカゲーム』には韓国ドラマが培ってきた「面白さの極み」がたっぷり詰まっているし、突拍子もないアイディアが見事なほどに大当たりした。
それが世界的な人気を博した理由に違いない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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