1961年生まれのヤン・ミギョンは、子供の頃はおとなしい性格で国語の授業が好きだったという。
夢は、心理学者になることだった。一人で過ごす時間が多かった上に、絵と詩が好きだったので、人間の内面世界に大きな興味があった。ヤン・ミギョンはそのときに興味をもった心理学が、演技生活に少なからず助けになったそうだ。
KBSのタレント・オーディションに合格してデビューしたのは1984年だ。順調に出演作を重ねていった。
運命的な恋愛もあった。1987年4月にKBSのTV歌謡ドラマの野外撮影をしているとき、自転車に乗るシーンで彼女は川に転落してしまったのだが、番組の演出家ホ・ソンリョンが川の中に飛びこんで助けてくれた。
これが契機となった2人は交際するようになり、半年後に結婚した。その翌年に息子が生まれている。
そんなヤン・ミギョンが『宮廷女官 チャングムの誓い』に出演したのは2003年のことだ。彼女が演じたハン尚宮(サングン)は、ドラマの中の王妃よりもっと優雅な女性だった。華麗な装いをしていないのにとても美しかった。
しかも、キャリアウーマンであり、師匠であり、母のような存在だった。弟子を厳しく温かく鍛え、正しい道に導いた。
ハン尚宮はそういう人だった。チャングムを大事に育てるが、チャングムが自己陶酔しないように、冷静に距離を置く。しかも、危機に陥ったときには、チャングムを助けるために自己犠牲に徹した。
このようなハン尚宮は、実際ヤン・ミギョンが見せる人間的に成熟したイメージと完全に同じだ。いつもは静かに本を読むことが好きな彼女だが、仕事をするときは積極的に行動する。
たとえばドラマの中で、チャングムが味覚を失い料理人として最悪の状況に陥ったとき、ハン尚宮は「自分を信じなさい。もし、自分を信じられないときは、私を信じて」と強い姿を見せる。
2人が監獄に閉じこめられていたとき、チャングムが「私はハン尚宮様が心配です」と言うと、ハン尚宮は「大丈夫よ。あなたにはすまないけれども、あなたと一緒にいるから痛くないし、さびしくないし、悲しくないわ」と揺るがない心を見せて、弟子を安心させる。
このように、ハン尚宮はときに威厳がある師匠に徹し、ときに深い母性愛を持った素顔を見せた。
容姿だけではなく、内面も美しい姿は、ヤン・ミギョンと同じように思えた。
文=康 熙奉
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