テレビ東京の韓流プレミアで放送中の『トンイ』。9月10日に放送された第28話は、まさに愛憎と策略、そして運命を懸けた激しい駆け引きが渦巻く濃密な一時間であった。
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画面に映し出されるのは、哀切と緊迫、そして痛快が交互に押し寄せる、胸を締めつけるような場面の連続である。
主人公トンイ(演者ハン・ヒョジュ)は、一度阻まれても決して諦めぬ強靭な意志を示す。粛宗との再会を目前にしながらも、張禧嬪(チャン・ヒビン/演者イ・ソヨン)が意識を取り戻したという報せによって、その機会は無情に奪われる。
しかし、そこで屈しないのがトンイである。翌日にはムスリ(水汲み)として再び宮廷へ潜入し、ひそやかに洗濯場で働きながら新たな突破口を探る。その眼差しは鋭く、運命に挑む若き魂の輝きを放っていた。
やがてトンイは、張禧嬪の衣に付着した緑豆の皮を発見する。この小さな手掛かりから疑念を抱いた彼女は、監察府の調査を巧みに利用し、チョン尚宮(演者キム・ヘソン)へ暗号を残す。
だが、ユ尚宮(演者イム・ソンミン)の妨害によって願いは届かず、無情な沈黙にかき消される。
それでも運命の糸は切れず、チョンイム(演者チョン・ユミ)が暗号を解読し、ついに3人は再会を果たす。再会の場面は息を呑むような緊張感に満ち、視聴者の胸を激しく揺さぶるのであった。
トンイはこれまでの経緯を語り、真実を粛宗へ届けようとする。しかしその矢先、チョン尚宮とチョンイムは禧嬪暗殺の共謀者として捕らえられてしまう。
容疑は前王妃にまで及び、宮廷はさらに陰惨な権力闘争の渦へと飲み込まれていく。やがて、トンイを忘れられないオ・ホヤン(演者ヨ・ホミン)が宮中で彼女の姿を見かけたと報告し、チャン・ヒジェ(演者キム・ユソク)は兵を動かし追跡を開始する。
しかし、トンイを捕らえられぬ兵士たちの滑稽さと、鮮やかな身のこなしで翻弄するトンイの姿が描かれ、観る者に痛快な解放感をもたらす。迫り来る危機の連続を乗り越え、彼女はついに間一髪で宮廷を脱出するのであった。
一方で、そのすべてを知らぬ粛宗は、胸の奥にわだかまりを抱えたまま夜の市中を彷徨う。
無意識に足が向いたのは、かつてトンイと盃を交わしたあの酒場である。そこで響いたのは、切なく懐かしいヘグムの旋律。その音色は、すれ違い続ける二人の運命を象徴するかのように、粛宗の胸を深く震わせた。
第28話は、狂気に近い執念で粛宗の心を繋ぎ止めようとする張禧嬪と、逆境に屈せぬトンイの強さが鮮烈に対比された回である。命懸けの策略、友情と裏切り、愛する者への切ない思慕。これらが複雑に絡み合い、宮廷劇の醍醐味を極限まで凝縮した珠玉の一幕であったと言える。
文=大地 康
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