NHKの韓流プレミアで放送されている韓国時代劇『太陽を抱く月』。このドラマには、兄を飛び越えて王の座に就き、失った初恋の女性を追い求める主人公のイ・フォンという人物が登場する。
実在した朝鮮王朝の27人の王の中で、主人公フォンに一番近い王は誰なのかを2回にわけて検証してみよう。
『太陽を抱く月』は、朝鮮王朝時代に存在した数々の事象を紡ぎ合わせることによって、物語の虚構を立ち上げている。
それゆえ、史実に置き換えて時代背景を想像したり、登場人物に限りなく近い人間を史実から探し出す楽しみも生まれる。
主人公フォンは、朝鮮王朝の架空の王という設定ではあるが、そこで描かれる時代の風景や人間関係の中には、“実在”を連想させるピースがいくつも散りばめられている。
まず、『太陽を抱く月』のモデルになった時代だが、登場するピースから判断すると、朝鮮王朝前期に絞り込むことができる。
なぜなら、王の居住として使われていた「康寧殿」や巫女たちが所属する「星宿庁」は、14代王・宣祖(ソンジョ)の時代まで存在していたからだ。
さらに、作中で繰り広げられる士林派と勲旧派の派閥抗争だが、これは9代王・成宗と10代王・燕山君(ヨンサングン)の時代がもっとも激しかった。
それを踏まえて考えると、イ・フォンに最も近い実在の王(モデル)は、成宗(ソンジョン)か燕山君ということになる。
しかし、燕山君は朝鮮王朝の中でもまれに見る粗暴な暴君であり、作中の聡明なイ・フォンとはあまりにかけ離れている。
一方、イ・フォンと成宗を重ね合わせてみると、意外なほど多くの共通点を見出すこととができる。その共通項を確かめながら、9代王・成宗の生涯をたどってみよう。
1457年、成宗は7代王・世祖(セジョ)の長男・懿敬(ウィギョン)の二男として生を受ける。しかし、同年に懿敬は病に倒れてしまい、世祖の二男が8代王・睿宗(イェジョン)として即位した。
物心つく前に父を亡くした成宗だが、幼い頃から学問を好み、絵画や書道にも才能を発揮する聡明な少年に育っていった。
果たして、『太陽を抱く月』の主人公フォンと9代王・成宗にはどんな繋がりがあるのだろうか。続きは後編で紹介しよう。
(構成=大地 康)
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