NHK総合テレビで絶賛放映中のドラマ『100日の郎君様』。
人気グループEXOのメンバーで役者としてはド・ギョンスの芸名で活動しているD.O.(ディオ)が演じる世子のイ・ユルは、ドラマの中で記憶喪失になって庶民に身分が変わってしまう。
それなのに、態度が世子のままなので「ダメ亭主」の烙印を押される。妻のホンシム(ナム・ジヒョン)があきれるのも無理はなかった。
そんなホンシムは典型的な庶民。身分制度では下位に位置しているので、立場が上の人によくいじめられる。理不尽だが、当時の制度では仕方がなかった。
そこで、朝鮮王朝の厳しい身分制度を見てみよう。
王家は身分制度を越えた別格の扱いなので、それを除けば身分制度のトップは両班(ヤンバン)だった。これは、貴族に該当する支配階級である。
役人となった両班は高等官僚として中央集権国家の担い手になっていたし、地方に在住する両班は有力な地主として庶民を統治した。
彼らは、庶民が知らない漢字を操り、詩を作り、書を習った。まさに、学問と文化に親しむ生活にひたったのだ。
特に大事だったのは、一族の繁栄を末永く保つこと。そのためにも、両班は婚姻を通じて貴族階級同士の縁戚関係を強めていった。
こうなると、典型的な既得権益者だ。その役得は朝鮮王朝時代を通じて守られた。
彼らに支配される側の身分を見ると、上から中人(チュンイン)、常民(サンミン)、賤民(チョンミン)となっている。
中人は、両班の下で実務を担当する人たち。下級官僚が該当する。
職能を発揮することで経済的には安定した生活を確保できるが、政治的には権力を持っていなかった。
中人の下が常民だ。
これは一般庶民のことで、人口のうえでは一番多かった。農業、商業、手工業に従事する人たちがほとんどで、毎日仕事に追われ、教育を受ける機会はない。それでいて重い税を課せられるので生活は大変だった。
身分制度の中で最も下に位置する人たちが賤民。大部分は奴婢で、所有者の意図に沿って売買されるのが常だった。
生まれながらにして過酷な運命にあったのだ。結婚して家庭を持つことはできたが、どんな仕事につくかを自分では決められなかった。厳しさに耐えかねて逃亡する人もいて、その生活は悲惨だった。
以上が朝鮮王朝の身分制度の概要だ。
ドラマの中には、悪徳な両班がたくさん出てくる。庶民はとことん苦しめられるのだが、その中でホンシムはたくましく生きていく。
実際、朝鮮王朝時代の庶民はしたたかで、生活の知恵をよく知っていた。それはホンシムを見ているとよくわかる。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
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