史実で読み解く『トンイ』⑱宮女が記していた「王妃の最期」

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傑作時代劇『トンイ』の後半では、パク・ハソンが演じる仁顕(イニョン)王后が亡くなる場面が大きなヤマ場となった。史実では、亡くなる直前の彼女はどのような様子だったのか。仁顕王后に付いていた宮女が執筆したと言われている『仁顕王后伝』には、当時の病状が詳しく記されている。その記述を基に再現してみよう。

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1701年7月(旧暦)、仁顕王后の病状は悪くなる一方だった。それなのに仁顕王后は主治医を遠ざけて薬を飲まなかった。それを聞いて粛宗(スクチョン)はびっくりしてしまった。すぐに粛宗は仁顕王后のもとに駆け付けて、彼女を諫めた。

「重病なのに薬をやめれば回復できないではないか。無理にでも薬を飲んで、早く余を安心させてくれ」

粛宗の言葉を聞いて仁顕王后はかすかな声で言った。

「このところ痛みが強くて、自分は死ぬのかと悟っています。薬を飲んでも効き目はほとんどないようです。そればかりか、からだの痛みがどんどん増すばかりです。殿下(チョナ)にご心配をかけないために、あえて薬を飲んできましたが、もう先の長くない私には無理なことなのです。お察しください」

『トンイ』の仁顕王后
パク・ハソンが演じた仁顕王后

衰えていく仁顕王后

その言葉を聞いて、衝撃を受けた粛宗は涙を流して言った。

「中殿(チュンジョン/王妃のこと)はどうしてそのような不吉なことを言って余の心を揺さぶるのか。もし痛みがひどいなら、数日だけでも薬をやめて、心を安らかにして養生しなさい」

こう言って粛宗は自ら重湯を勧めていた。彼は本当に心配でならなかった。

それでも、仁顕王后のからだは徐々に衰えていった。彼女は控えている宮女たちに向かって優しく呼びかけた。

「私はもう先が長くないでしょう。みんなは私の喪が明けたら、実家に帰って父母や兄弟の世話をして、しっかり生きていきなさい。そして、いつの日か、あの世でぜひ再会しましょう」

仁顕王后がそう言ったので、宮女たちはみんな一斉に顔を覆って泣き出してしまった。それは、本当に辛い瞬間であった。

文=康 熙奉(カン・ヒボン) 

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