韓国関係の著書が多い作家の大島裕史。数年にわたり、韓国全土を取材した日々をもとに渾身の旅行記連載をスタートさせます。
日本人が知らない韓国の本当の姿、歴史がたっぷりと描かれた新連載『韓国深発見』。まずは韓国の空の玄関口である仁川(インチョン)から始めましょう。
近年、金浦(キムポ)発着便が増えているとはいえ、韓国の空の玄関と言えば、仁川(インチョン)国際空港である。
港町である仁通じる韓国の表玄関として発展してきた。仁川は韓国第3の都市で、首都から近い港町という意味では、横浜によく似ている。
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仁川にはソウルに近い新市街の富平(プピョン)と、史跡の多い旧市街がある。旧市街である仁川駅周辺は、韓国の近現代史において重要な役割を果たした、歴史の舞台である。
ソウルから旧市街である仁川駅に行くには、市庁などソウルの中心部を通る地下鉄1号線と相互乗り入れしている京仁(キョンイン)線に乗る。およそ1時間で着く、終点が仁川(インチョン)駅だ。
海に近く、ほのかに潮の薫りがする終着駅のホームを歩き、改札を出ると、妙に懐かしい気分になる。近年韓国各地の駅は新築改修が進み、空港のようなガラス張りの駅舎が目立つようになったが、仁川駅の白を基調とした長い箱型の駅舎には、かつてはこんな駅舎が多かったという、郷愁が漂う。
そもそも京仁線は、1889年に開通した韓国最初の鉄道である。この鉄道は、1894年の日清戦争に勝利した日本が敷設権を得たが、その後の三国干渉により、一度アメリカに渡り、後に再び日本のものになるという紆余曲折を経ている。それだけでも、当時の複雑な状況が感じ取れる。
ただいずれにしても、鉄道が開通したことで、仁川港で荷揚げされた物は、鉄道によってソウルに運ばれることになった。
それまで、物流の中心は漢江(ハンガン)であった。しかし鉄道の開通で、漢江の港として栄えたソウルの麻浦(マポ)などは、その機能を鉄道に奪われることになった。
仁川駅前の小さな広場には、「韓国鉄道誕生駅」と書かれた、蒸気機関車のモニュメントが設置されている。
文・写真/大島 裕史
大島 裕史 プロフィール
1961年東京都生まれ。明治大学政治経済学部卒業。出版社勤務を経て、1993年~1994年、ソウルの延世大学韓国語学堂に留学。同校全課程修了後、日本に帰国し、文筆業に。『日韓キックオフ伝説』(実業之日本社、のちに集英社文庫)で1996年度ミズノスポーツライター賞受賞。その他の著書に、『2002年韓国への旅』(NHK出版)、『誰かについしゃべりたくなる日韓なるほど雑学の本』(幻冬舎文庫)、『コリアンスポーツ「克日」戦争』(新潮社)など。
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