第82回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に正式招待され、第30回釜山(プサン)国際映画祭の開幕作に選ばれたほか、第50回トロント国際映画祭、第63回ニューヨーク映画祭にも招待された映画『仕方がない』(原題/英題:NO OTHER CHOICE)。2026年アカデミー賞国際長編映画部門で韓国代表作にも選出され、さらなる注目が集まっている。
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アメリカの小説家ドナルド・E・ウェストレイクの小説『X』を原作とし、韓国映画界の巨匠パク・チャヌク監督がメガホンを取った映画『仕方がない』は、「すべてを成し遂げた」と感じるほど満ち足りた生活を送っていた会社員マンス(イ・ビョンホン)が突然の解雇に遭い、妻ミリ(ソン・イェジン)と二人の子ども、そして苦労して手に入れた家を守るために再就職を目指し、自分なりの戦いに挑む姿を描いている。今回、主演のイ・ビョンホンに作品や自身の思いについて聞いた。
―映画は突然のリストラから物語が動き始めますが、パク・チャヌク監督も普段から「雇用不安について常に考えている」と語っていました。イ・ビョンホンさんはどうお考えですか?
「現在の雇用不安というよりも、幸いにも私たちはまだ選択できる立場にあります。作品のオファーが来ている今は本当に幸せな状況ですが、周りにはそうではない俳優もたくさんいます。パク監督の周囲の同僚監督たちにも、そういう状況にある人が多いでしょう。直接ではありませんが、間接的に不安を感じます。これは誰にでもあることで、私自身も次の作品をまだ決められていません。“今までやってきたようにまたやれるだろう”と安心できる立場にありますが、そうではない人も多いのではないでしょうか」
―最近、俳優仲間とAIの話題をよく交わすそうですね。
「もはや未来ではなく“現実だな”と思います。私自身もそれに近い経験をしました。ある映像を見て面白いと思い、その映像に映っていた俳優仲間に見せたら“自分ではない”と言われました。“いつ撮ったんだ?”と聞いたら、本人じゃないと言われて本当に驚きました。鳥肌が立ちました」
―ご自身のAI映像もご覧になったとか。
「『イカゲーム』のときによく出回っていました。イ・ジョンジェとのブロマンス映像を見て“いつ撮ったんだ?”と驚きました。“あ、だめだ”と思ってぎょっとしました(笑)。最初は感心しましたが、“これから私たちはどうなるのか?映画はどうなるのか”と考えるようになりました。監督が“こういうジャンルのシナリオを書いてくれ”とAIに言えば、AIが作れるようにもなるでしょう。作家も監督も音楽も同じだと思います。ハリウッドのストライキは遠い未来のことではありません。だからハリウッドでは解決策を模索していますが、私たちも対策を講じなければならないと思います。何もしないまますべてが侵食されてしまってはいけません」
―共演したソン・イェジンさんについてはいかがですか?
「どうして今まで共演してこなかったのかと思いました。作品では一緒になれませんでしたが、授賞式や行事などで時々会う仲で、妻の友人でもあり、ふたりは同じ事務所にも属しています。ソン・イェジンさんが我が家に遊びに来ることもあったので、人としての気安さはありました。ですが撮影が始まって、“なぜソン・イェジンなのか”ということが一瞬で分かりました。彼女は監督の要求することすべてに応え、見事に演じきっていました。本人は混乱したと言っていましたが、とても上手にやり遂げてくれました。台詞に感情を込めるのが本当に見事でした。特に夫婦喧嘩のシーンでの演技は素晴らしかったです」
―デビュー30周年を迎え、今年は『仕方がない』をはじめ、Netflixシリーズ『イカゲーム』シーズン2・3、『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』など、演技と声の演技を行い、世界的に支持を集めましたが、何かエピソードはありますか?
「息子に『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』にも参加しているんだと教えたら喜んでいましたが、映画を観たあと“アッパ(パパ)はどの役だったの?”と聞かれました。“グィマだよ”と答えたら、最初は喜んでいたのに“今回も悪役なの?”と言われました。“すごくかっこいいじゃないか”と言っても納得しませんでした(笑)。息子はあまり気に入っていないようです。悪役だから父親の味方をするのも微妙で、しないのも微妙な立場のようです」
―奥様イ・ミンジョンさんとのSNSでのやりとりも話題ですね。
「(妻の)インスタよりYouTubeを見ることが多いです。妻は私のSNS投稿にからかいやツッコミ、面白いコメントをよく書いてきます。以前は気にして見ていましたが、今は“まあそういうものだな”と思うようになりました」
冗談を交えながらも、AI時代の映画界の未来や仲間への思いを率直に語ってくれた。映画『仕方がない』は、彼のキャリア30周年を彩る記念碑的な一作となりそうだ。
(構成=韓ドラ・時代劇.com編集部)
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