昨年大ヒットした『涙の女王』は、韓国の財閥クイーンズグループを舞台にしたドラマだった。この中で、創業者の息子で副会長ホン・ボムジュンを演じていたのがチョン・ジニョンである。
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ボムジュンは財閥の正統的な後継ぎなのだが、どうもビジネスに向かないところがあって、人と争うことがまったくできなかった。そのあげくに、ジグゾーパズルばかりに熱中してしまう。まるで頼りない財閥二世なのだが、チョン・ジニョンはわりとコミカルに演じて好評を博した。
そんなチョン・ジニョンが15年前に出演したドラマが『トンイ』であった。演じたのは捕盗庁(ポドチョン)の従事官ソ・ヨンギだ。
この男はどこまでも職務に忠実で、とても信頼できる人物だった。しかも、ハン・ヒョジュが演じた主人公トンイのことを好意的に見てくれた。彼がトンイのことを救った場面が何度もあったほどだ。
このように序盤から存在感が際立っていたソ・ヨンギだが、特にドラマの中盤に入ると、行方不明になったトンイを探してどこまでも奔走していた。
国王の粛宗(スクチョン／演者チ・ジニ)からトンイの行方を探すように命じられただけに、彼も本当に必死になってトンイの行方を追っていた。それは涙ぐましいと思えたほど一生懸命であった。その末に、トンイは無事に王宮に戻って粛宗に会うことができた。
そういうお膳立てをしたソ・ヨンギを堂々と演じたチョン・ジニョン。彼は『トンイ』で演じた役についてこう語っていた。
「ソ・ヨンギは信念を曲げない男です。彼のような生き方をすると苦労も多いのですが、今の社会に必要な人物だと思います」
その思いが強かったからこそ、チョン・ジニョンはソ・ヨンギという役に魂を込めた。笑うこともなかったし、いつも顔はしかめっ面だった。それでも、ソ・ヨンギには不正を憎んで正義に邁進する心意気があった。そして、彼の精悍な表情は『トンイ』というドラマをキリリと引き締めた。
結局、チョン・ジニョンの俳優人生においても、『トンイ』は本当に貴重な作品になった。
文＝康 熙奉（カン・ヒボン）
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