日本でDisney+で配信中の韓国ドラマ『私たちの映画』は、恋愛劇の装いの中に、夢と死、才能と限界、そして愛と時間という深いテーマを巧みに織り込んだ意欲作である。
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主人公イ・ジェハ(演者ナムグン・ミン)は、名匠と呼ばれた父の影に悩まされながら、自身も映画監督としての道を歩む男。次回作が最後になるかもしれないという極限の不安と葛藤のなか、自らの存在を賭けた1本の映画に挑もうとしている。
その主演に抜擢されたのが、新人女優イ・ダウム(演者チョン・ヨビン)。医師から余命宣告を受けた彼女は、残された時間で本物の演技をしたいと強く願っている。限りある命の輝きをスクリーンに刻もうとする彼女の姿は、視聴者の心に深い余韻を残す。
さらに物語の要となるのが、プロデューサーのチェ・ソヨン(演者イ・ソル)である。ソヨンは、ジェハの過去と現在をつなぐ人物であり、彼の迷いや決断に静かに寄り添う。
彼女の放つ言葉が、ジェハの選択を導く重要な要素となっており、両者の関係は単なる仕事仲間を超えた深さを持つ。
ソヨン役を演じるイ・ソルは、舞台女優としての下積みを経て、『悪い刑事』で社会部記者でサイコパスのウン・ソンジェを演じ、一躍脚光を浴びた。同作での演技が評価され、同年のMBC演技大賞新人賞を受賞している。
以降も、『D.P.-脱走兵追跡官-』で脱走兵シン・ウソク(演者パク・ジョンウ)の姉で軍人権センター幹事のシン・ヘヨンを演じた。
今回の『私たちの映画』では、内面の葛藤を秘めたプロデューサーという役に挑み、静かながらも物語の重心を支える確かな存在感を放っている。
そんなイ・ソルは、女優として今後はどんなドラマに出演するのか。次世代の実力派として、彼女の今後の活躍から目が離せない。
文=大地 康
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