韓国を代表する大女優となったキム・ヘスは、恵まれたデビューを飾っている。1986年の『カムボ』で、いきなり映画で重要な役を演じたのだ。あどけなさが残る中学生ながら、世の中を驚かせるほどの瑞々しくも鮮烈な演技を披露した。
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その後のキム・ヘスは、まさに疾風のような勢いで子役として多くの作品に出演し、作品ごとに新たな演技の花を咲かせていった。彼女にとって10代とは、無限の可能性が花開く黄金の季節だったといえる。
そして、1993年。映画『初恋』で、キム・ヘスは地方の美術大学に入学したヨンシンという純真無垢な女子大生を演じた。夢見るような眼差しで、大学生活に胸を躍らせていたが、現実は思い描いた理想とは違い、劇場と喫茶店を行き来する退屈な日々に変わっていく。
そんな彼女の平凡な日常を一変させたのは、演劇クラスに現れた演出家チャンウクの存在であった。彼を知れば知るほど熱い感情が芽生え、その心の変化をキム・ヘスは胸が高鳴るほどの鮮やかな演技で表現した。
この作品を境に、若く美しいキム・ヘスは、まるで春の花のように一気に芸能界のアイドル的存在となった。だが、それは単なる人気先行のものではなく、しっかりとした演技力と堂々たる存在感を備えた、真の実力派としての歩みでもあった。
そんなキム・ヘスが2年後に出演した映画が『永遠なる帝国』だ。韓国が誇る国民俳優アン・ソンギとの共演は話題となったが、この作品は朝鮮王朝時代の王と官僚たちの権力闘争を描く重厚な時代劇である。しかし、歴史の深みを追求するあまり、物語はあまりに複雑となり、観客の心には届かず、映画は痛々しいまでの大敗を喫した。
この経験は、キム・ヘスにとって、まさに魂を揺さぶるほどの大きな挫折であった。誰よりも華やかなキャリアを誇っていた彼女だからこそ、その敗北の重さは、心の奥深くまで突き刺さった。
そして、キム・ヘスは気づいたのだ。数ではなく、質が大切であることを…。「良質のシナリオに巡り会ってこそ、心から満足できる作品が生まれる」という、シンプルでありながら重みのある真実を、身をもって悟ったのである。結局、挫折した経験が、彼女をただの女優ではなく、韓国芸能界を代表する不動の存在へと導いたのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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