韓国時代劇の大傑作と評価されている『宮廷女官チャングムの誓い』。2003年から2004年にかけて放送された作品だが、よく見ていると、俳優の吐く息が真っ白になっている場面も多かった。それこそが、厳寒期に撮影が行われていたことの証だった。
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当時は、放送の直前に予定していた撮影がようやく終了するような過密スケジュールであり、撮影が深夜に及ぶことも当たり前だった。
必然的に、出番が多いイ・ヨンエやチ・ジニは常にスタンバイしていて、寒さ対策の苦労も並大抵ではなかった。特に、雪の中での撮影は身も凍るほどの極寒だったという。まさに「寒さとの闘い」でもあったのだ。俳優は本当に体力勝負だったと言える。
それだけではなかった。チ・ジニの場合にはもう一つの「撮影対策」が必要になっていた。なんと、ヒゲに関することなのである。
朝鮮王朝時代に王宮にいた男性は、ヒゲを生やしているのが常識だった。これは「親から受け継いだ人体を傷つけてはいけない」という儒教的な価値観から生まれている発想だ。もちろん、チ・ジニが演じているミン・ジョンホもヒゲが欠かせなかった。
いつもの撮影のとき、チ・ジニは接着剤でヒゲをつけていたのだが、その接着剤の匂いがかなりきつかったという。しかも、そのヒゲはセリフを言うたびに落ちそうになるので、そうならないように細心の注意を払った。
「いつヒゲが落ちてしまうか」
ヒヤヒヤしながらチ・ジニはセリフを言わなければならなかった。そこまで気を配らないといけないので、男性の俳優は大変だった。
その他に、撮影中に馬に乗って走るシーンでもトラブルが多かったようだ。馬は制作スタッフの思いどおりに走ってくれない。人間のように融通がきかないので、撮影のときはやり直しが多かった。
以上のように、数々の苦労を経験しながら『宮廷女官チャングムの誓い』の撮影をやりきったチ・ジニ。彼にとって、このドラマはとても思い出深い作品になっている。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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