時代劇『イ・サン』で美しいヒロインとなっているソン・ソンヨン。女優のハン・ジミンが清楚に演じているが、ドラマの中でソンヨンは朝鮮王朝の儀式の状況絵画を作る図画署(トファソ)の茶母(タモ)になっている。茶母は下働きの女性を指しており、身分は低かった。
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歴史的に言うと、『イ・サン』におけるソンヨンという役は宜嬪・成氏(ウィビン・ソンシ)がモデルになっている。宜嬪・成氏は本名が成徳任(ソン・ドギム)であり、かつて王宮の宮女をしていた。後にイ・サンの側室になって世子(セジャ)も産んでいる。
ドラマと史実の違いを言えば、宜嬪・成氏が図画署の茶母をしていたという事実はまったくない。そういう境遇は完全なフィクションなのである。
イ・ビョンフン監督は「時代劇の巨匠」と称されているが、実在の女性の経歴を変えてヒロインを別人のように描くことが多かった。『宮廷女官 チャングムの誓い』や『トンイ』もそうだったし、『イ・サン』も同様だった。
このように「史実+フィクション」でヒロインを魅惑的な人物設定にするイ・ビョンフン監督の独自スタイルによって、ソンヨンというキャラクターは誕生している。
ドラマでは、イ・サンとソンヨンは幼なじみという設定になっていた。イ・ソジンとハン・ジミンではなく子役が演じて愛らしい表情を見せていたが、これは史実に近いことだ。というのは、イ・サンより1歳下であった宜嬪・成氏は9歳のときに宮女の見習いとして王宮に入って恵慶宮(ヘギョングン)の屋敷で修業をしていたからである。
恵慶宮(ヘギョングン)といえばイ・サンの母親である。その下で働いていれば、当然ながら宜嬪・成氏とイ・サンは顔なじみであったことだろう。2人は幼なじみというドラマの設定は史実にも合っているのである。
ドラマの終盤になってイ・サンの側室になっていくソンヨン。彼女は子供の頃から終始一貫して「イ・サンに最も愛された女性」と言われたのも当然のことであった。
文=大地 康
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