『太陽を抱く月』でチョン・イルが演じていたのは王族の陽明君(ヤンミョングン)である。
彼には複雑な感情があった。それは、キム・スヒョンが扮する弟のフォンが王になり、兄である自分は王宮の外でひっそり暮らしていかなければならないということだ。
さらには、ハン・ガインが演じるウォルへの愛情が深すぎて、容易にあきらめることができなかった。
それもすべて、陽明君が側室から生まれた王子であったことから起因している。朝鮮王朝時代には、王子といえども側室の子供はそれほど本流にはなれなかったのだ。そうした苦悩をチョン・イルは悲しみをにじませた表情で演じていた。
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考えてみれば、『太陽を抱く月』というドラマは、つらい過去によって苦しめられてきた人たちの物語であった。陽明君もその1人だ。そして、チョン・イルは陽明君の悲しみを端正な容貌で演じきっていた。
『太陽を抱く月』に出演したあと、チョン・イルは俳優として充実した日々を過ごし、さらに兵役によって2年間の芸能活動の休止も経験した。
彼にとっては辛抱の時期が続いたわけだが、2018年11月に兵役が終わったあとにすぐ主演した作品が『ヘチ 王座への道』だった。
この作品は大変な話題作だった。というのは、脚本を書いたのが『イ・サン』と『トンイ』を書いたキム・イヨン作家だったからだ。これほどの大物が脚本を担当しただけに、『ヘチ』への期待感はとても高かった。
このドラマでチョン・イルは、若き日の英祖(ヨンジョ)に扮している。
ドラマは、低い身分の血を受け継いだ「歓迎されない王子」が朝鮮王朝の政治を改革するまでを描いている。ここで「歓迎されない王子」と表現されたのは、英祖の身分が低かったからだ。
それゆえ、『ヘチ』は「最も低いところから始まった一番輝かしい王位継承物語」がキャッチフレーズになっていた。
とにかく、『太陽を抱く月』で王になれなかったチョン・イルが、『ヘチ』では立派な王として即位した。役柄の上では、チョン・イルが念願を果たしたのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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