『100番の思い出』は、1980年代という光と影が交錯する時代を舞台に、青春の息吹を鮮やかに描き出した作品である。
携帯電話もSNSも存在しなかったあの頃、バスや映画館、音楽喫茶や夜間学校といったアナログな空間は、若者たちの夢や憧れ、そして切ない恋心が交差する舞台であった。懐かしさと新鮮さを同時に感じさせる物語は、観る者を自らの青春の記憶へと誘い、心に眠る情熱をそっと呼び覚ます。
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第1話は、市内バス100番の車掌として働くコ・ヨンレ(演者キム・ダミ)の小さな失敗から幕を開ける。慌てる彼女を救ったのは、偶然そこに居合わせたソ・ジョンヒ(演者シン・イェウン)であった。その出会いをきっかけに、2人は同じ会社で働き、同じ寮で生活することになる。
最初は礼儀知らずに見えるジョンヒに戸惑うヨンレ。しかし、厳しい仕事や寮での困難を共に乗り越えるうちに、次第に友情という温かな絆が芽生えていく。
一方、ヨンレは高校生ハン・ジェピル(演者ホ・ナムジュン)に助けられ、初恋のように甘く切ない胸の高鳴りを覚える。夜の屋上で星空を仰ぎながら夢を語り合う姿や、いじめに毅然と立ち向かうジョンヒの凛々しい姿は、青春のきらめきを象徴する場面として鮮烈に残る。
第2話では、ヨンレが劇場で偶然ジェピルと再会し、かつて自分を助けてくれた青年であることに気づく。その瞬間、胸は高鳴り、彼女の心に淡い恋が芽生える。しかし同時に、昼は仕事、夜は学校という過酷な日々に悩み続ける。そんなヨンレを支えるのは、兄のささやかな応援と、ジョンヒとの固い友情であった。
ジェピルもまた、家族の期待と自らの夢の間で苦悩し、もがいていた。やがて合コンという思いがけない場でヨンレと向き合い、物語は友情と恋愛が入り混じる繊細な局面へと展開していく。
ラジオから流れる音楽に合わせてヨンレとジョンヒが踊る場面は、重苦しい日常に小さな光が差し込むようで、観る者の心を温かく包み込む。
『100番の思い出』は、友情の芽生えと初恋のときめきを描いた第1話と第2話を通して、青春の甘美さと苦さを鮮やかに映し出す。バスや喫茶店、映画館といった当時の風景は、アナログな温もりを伴って描かれ、世代を超えて共感を呼び覚ます。
屋上で夢を語り合う姿、喫茶店で交わされる視線、ラジオのリズムに合わせて踊る瞬間は青春を象徴するかけがえのない光景として、観る者の胸に深く刻まれるのである。
この物語は、誰もが心に秘めた「青春の記憶」を呼び起こし、懐かしさと新鮮さを同時に味わわせてくれる、珠玉の青春ロマンスである。
◆『100番の思い出』概要
放送局:JTBC(2025年)
出演者(役名):キム・ダミ(コ・ヨンレ)、シン・イェウン(ソ・ジョンヒ)、ホ・ナムジュン(ハン・ジェピル)、イ・ウォンジョン(マ・サンチョル)
監督:キム・サンホ(『39歳』など)
脚本:ヤン・ヒスン(『イルタ・スキャンダル~恋は特訓コースで~』『一度行ってきました』『知ってるワイフ』など)
配信情報:
文=大地 康
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