ドラマ『薯童謠(ソドンヨ)』は「郷歌」といわれる朝鮮半島に固有な詩歌のひとつだ。新羅(シルラ)で誕生した「郷歌」は、“故郷の歌”を意味する。
高句麗(コグリョ)、新羅、百済(ペクチェ)が鎬を削った三国時代の末期から、統一新羅時代の約370年間にわたって一般民衆に流行したとされ、『薯童謠』や『普賢十願歌(ポヒョンシプウォンガ)』をはじめとする25首が現存している。
ちなみに『薯童謠』は、歴史書「三国遺事(サングクユサ)」の2巻に収録されている。
内容は百済の王子と新羅のお姫様が恋に落ちるというものだが、2人が実在したとされる600年代前半は、百済と新羅が激しく対立していた。そのため『薯童謠』は完全な創作であるという説がある。
新羅と百済は、仏教を崇拝するなど共通した文化的要素を持ち合わせていた。政治的、軍事的対立は激しかったものの、百済と新羅の民衆の精神世界は共通した部分が多かったのかもしれない。
戦争を憂い、愛が世界を救うと考えた民衆が、何らかの形で『薯童謠』を作りだしたと考えることもありうるだろう。いずれにせよ、謎に包まれたロマンス『薯童謠』は、現代の人々にも普遍的な愛のかたちを示唆してくれている。
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