“千の顔を持つ男”。それが俳優イ・ビョンホンの代名詞である。
実際、そのフィルモグラフィーはバリエーションに富んでいる。
例えば映画『JSA』では心に葛藤を抱える兵士を演じ、ドラマ『美しき日々』では真実の愛に目覚めるプライド高き御曹司に変身した。
ドラマ『オールイン』では愛に一途なギャンブラーを、映画『甘い人生』では破滅への道を辿っていく孤独な男の悲しみも印象深い。
『グッド・バッド・ウィアード』『インサイタース/内部者たち』『MASTER/マスター』などで個性的な悪役を演じたかと思えば、ドラマ『アイリス』では自身と国家の運命に果敢に立ち向かうスーパーエージェントにも扮している。映画『悪魔を見た』で演じた、残酷なまでに復讐に燃える姿も強烈だった。
しかも、その活躍は韓国だけにとどまらない。映画『HERO』、ドラマ『外交官 黒田康作』といった日本作品はもちろん、ジョシュ・ハートネット、木村拓哉と共演した多国籍映画『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』や、ハリウッド映画『G.I.ジョー』シリーズや『REDリターンズ』『マグニフィセント・セブン』など、その活躍はワールドワイドに及んでいる。
“韓流スター”という単語ではその人気と実績を語り尽くせないどころか、その表現を使うこと自体がむしろ失礼に思えるくらい、ヒット作や代表作が多く、話題性にも事欠かない。まさに正真正銘の俳優であり、ワールドスターである。
そんなイ・ビョンホンの存在感は、時代劇の世界でも際立っている。
例えば時代劇初挑戦となった映画『王になった男』だ。
2012年9月に韓国で公開と同作は1200万人の観客動員に成功し、イ・ビョンホン主演作としては最大のヒット作となった。
韓国の総人口が4000万人強であることを考えると、実に国民の4分の1が鑑賞したわけだ。まさに “千の顔を持つ男”が、“一千万人の観客動員に成功した男”になったのである。
2015年には高麗時代を舞台にした映画『メモリーズ 追憶の剣』に主演。今までも数々のアクションに挑戦してきたイ・ビョンホンが、香港映画を彷彿とさせる剣術アクションにノースタントで挑み、新境地を開拓している。
そして2017年には、韓国で“丙子胡乱(ピョンジャホラン)”という呼び名で記憶されている歴史的事実を題材にした歴史スぺクタクル映画『天命の城』に主演。
“丙子胡乱(ピョンジャホラン)”とは1693年に起きた後金(のちの清)による朝鮮王朝侵攻のことで、映画はその当時に南漢山城に籠城し、孤立無援の状況下で47日間を過ごした朝廷の様子をドラマチックに描いているが、イ・ビョンホンは民と国の将来のために一時的な恥辱に耐えてでも清への降伏を促す忠臣チェ・ミョンギルを見事に演じきった。
道化師と王様の1人二役に剣術アクション、そして実在した忠臣まで。まさに時代劇の世界でも“千の顔を持つ男”イ・ビョンホン。
ただ、いずれも時代劇映画であり、ドラマでの時代劇挑戦はまだない。1900年初頭の朝鮮半島を舞台にしたドラマ『ミスター・サンシャイン』に主演しているが、それも近現代史。
それだけにいつか時代劇ドラマでもその圧倒的な演技力を見たいものだ。きっと“千の顔を持つ男”のキャリアにふさわしい、新しいフィルモグラフィーになるに違いない。
生年月日:1970年7月12日生まれ
身長:177cm
出身校:漢陽大学仏語仏文学科
中央大学新聞放送学科大学院
☆主な出演作
『アスファルト 我が故郷』(ドラマ、1991年)
『JSA』(映画、2000年)
『美しき日々』(ドラマ、2001年)
『オールイン 運命の愛』(ドラマ、2003年)
『アイリス』(ドラマ、2009年)
『G.I.ジョー』(映画、2009年)
『王になった男』(映画、2012年)
『南漢山城』(映画、2017年)
『それだけが、僕の世界』(映画、2018年)
『『南山の部長たち』(映画、2020年)
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