韓国KBS2で放送され、U-NEXTで配信中の『ウンスのいい日』は、平凡な女性が想像を超える試練に直面する姿を描いたヒューマン犯罪スリラーである。
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その中心に立つのは、イ・ヨンエ演じるカン・ウンス。家庭の小さな幸せだけを願って生きてきた1人の主婦が、運命のいたずらによって犯罪の闇に引きずり込まれていく過程が、息をのむ緊張感で展開していく。
カン・ウンスは、高校卒業後に銀行へ契約社員として入社したものの正社員にはなれず、現在はスーパーでパート勤務をしている。唯一の救いは、職場で出会った夫との結婚と、授かった娘の存在だった。
贅沢を夢見たこともなく、他人を羨むこともなく、ただ与えられた生活に感謝しながら家族と穏やかに暮らすことが彼女の夢であった。だが現実は残酷で、夫は病に倒れて余命を宣告され、娘は自主退学。担保に入れた家も失いかけ、日常は音を立てて崩れていく。
そんな彼女の運命を一変させるのが、偶然手にしてしまった“薬物入りのかばん”であった。
この作品で圧倒的な存在感を放つのが、イ・ヨンエの演技である。『宮廷女官チャングムの誓い』で女官から医女になる主人公チャングムを演じ、『師任堂(サイムダン)、色の日記』では、500年前の天才画家シン・サイムダンと現代の韓国大学韓国美術非常勤講師ソ・ジユンの2役を務めた。
さらに、『私のIDはカンナム美人』ではドイツ文学科卒業生として登場し、『調査官ク・ギョンイ』ではNT生命保険調査官ク・ギョンイに扮した。
そんなイ・ヨンエが演じるカン・ウンスは、単なる被害者ではない。夫と娘を守るために必死で立ち上がり、時に自らの倫理観をも揺るがしながら選択を迫られる姿が描かれる。
病室で夫の手を握りながら必死に笑顔をつくる場面や、娘にだけは未来を与えたいと涙をこらえる瞬間は、観る者の胸を締めつける。
彼女の静かな表情の奥に潜む強さと弱さ、その両面を同時に見せる演技は、長年の経験を積んできた女優ならではの深みを感じさせる。
『ウンスのいい日』は、イ・ヨンエの女優としての新境地を示すと同時に、視聴者に“平凡な幸せを守ることの難しさ”という普遍的な問いを突き付ける。
小さな夢を抱いて生きる女性が、なぜ極限の状況に追い込まれてしまうのか。ウンスの苦悩を通して描かれるのは、現代社会の冷酷な現実である。
家族を守るために何を選び、どこまで闘えるのか。イ・ヨンエの渾身の演技を通して、その答えを見届けることが本作の大きな魅力である。
文=大地 康
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