Netflixで配信されているドラマ『暴君のシェフ』は、荘厳な時代劇の重みと奇想天外なファンタジーの魔法、そして食と愛の芳醇な物語を織り上げた、かつてない輝きを放つ異色作である。
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舞台は現代から幕を開ける。華やかな料理界で栄光の頂点を極めたシェフが、運命の悪戯によって時空を越え、朝鮮王朝の宮廷へと突如として投げ込まれるのである。
現代的な感覚をまとった料理人と、冷酷無比な暴君と呼ばれる王との出会いは、歴史の静寂を揺さぶり、宮廷に嵐のような波乱を呼び覚ます。
精緻に作り込まれた美術や絢爛たる衣装に加え、食を通じた鮮烈で創意に富んだ演出が重なり合い、観る者の五感を揺さぶる新感覚の歴史ファンタジーとなっている。
その華やかな舞台で、強烈な存在感を放つのがカン・ハンナが演じるカン・モクジュである。彼女はきらめくような美貌を持ち、歌と舞、さらには伽耶琴をも極め、男心を翻弄する妖艶な技を備えた稀有な人物として登場する。
表の顔は王に愛され高位に昇った寵妃であるが、裏の顔は済山大君のために暗躍する間者。煌めく栄光の絶頂から一瞬にして暗黒へと堕ちていく悲劇的運命が、視聴者の心を鋭く捕らえて離さない。
悪女でありながらも哀愁を帯びた複雑な人物像は、カン・ハンナの繊細かつ圧倒的な演技力によって鮮烈に描き出されるのである。
彼女の軌跡を振り返れば、カン・ハンナは常に新しい顔を見せ、作品ごとに全く異なる輝きを放ってきた。
『魔女宝鑑~ホジュン、若き日の恋~』では、朝鮮王朝第14代王・宣祖(ソンジョ)の妃・中殿(チュンジョン)パク氏を演じ、『麗〈レイ〉~花萌ゆる8人の皇子たち~』では、高麗初代王ワン・ゴンの娘であるファンボ・ヨナに扮した。
さらに現代劇においても彼女は鮮烈な印象を残している。
『スタートアップ:夢の扉』では、ペ・スジ演じるソ・ダルミの姉でネイチャーモーニング代表のウォン・インジェに扮し、『正直にお伝えします!?』ではJBCバラエティ番組放送作家オン・ウジュを演じた。
時代劇や現代劇、ファンタジーやロマンスなど、彼女は変幻自在に役を纏い、そのたびに新たな表情を観客へと届けてきた。
『暴君のシェフ』におけるカン・モクジュという役柄は、その多彩なキャリアの集大成ともいえる複雑で濃密なキャラクターである。
悪女でありながらも人間的な切なさを秘めた姿は、カン・ハンナの俳優人生が培ってきた幅広い演技の力を証明している。華麗なる映像美と緻密な脚本に支えられたこの作品は、まさに彼女の挑戦と飛躍を刻む舞台であり、その名をさらに鮮やかに輝かせるであろう。
『暴君のシェフ』は、韓国ドラマの新たな可能性を示す珠玉の一編であり、視聴者に深い余韻と感動を残すことは疑いないのである。
◆『暴君のシェフ』概要
放送局:tvN (2025年)
出演者(役名):イム・ユナ(ヨン・ジヨン)、イ・チェミン(イ・ホン)、カン・ハンナ(カン・モクジュ)、チェ・グィファ(済山大君〔チェサンデグン〕)、ユン・ソア(ソ・ギルグム)
監督:チャン・テユ(『星から来たあなた』『根の深い木 -世宗大王の誓い-』『風の絵師』など)
脚本:fGRD
配信情報:Netflixにて独占配信中
文=大地 康
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