「酒なしで人生を語れるのか？」という問いに、真っ向から挑むロマンスドラマがある。韓国ドラマ『禁酒をお願い』は、飲酒を愛するあまり「自分は節度ある酒好き」と信じてきた女性が、かつての初恋の相手と再会することで、思いがけず禁酒生活に踏み出すことになる物語だ。
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U-NEXTで配信されている本作は、笑いあり、切なさありの“しらふ”ラブストーリーとして注目を集めている。
主人公のハン・クムジュ（演者チェ・スヨン）は、自動車整備工としてバリバリ働く職人気質の女性。仕事終わりの一杯を何よりの楽しみにしてきた彼女は、アルコールと共に生きてきたと言っても過言ではない。そんな彼女が、ある日、帰省先の故郷・ポチョン村で、高校時代の同級生ソ・ウィジュン（演者コンミョン）と再会する。
かつては気の合う飲み友でもあったウィジュンだが、現在の彼はなぜか酒を毛嫌いしている。そんな彼の姿に戸惑いつつも、クムジュは素面で向き合う関係性を模索し始める。
このドラマの興味深い点は、酒という身近なテーマを介して、恋愛や家族、そして自分自身とどう向き合うかを描いている点にある。
クムジュとウィジュンの関係は、過去と現在の間で揺れ動く。高校時代には、制服姿で明るく笑い合いながら、お互いに好意を感じさせるような初々しい交流を育んでいた。
しかし、ある事件をきっかけに疎遠となり、再会した今では、テーブルを挟んで気まずくお茶を飲む間柄へと変わっている。この感情のグラデーションを丁寧に描くことで、観る者の共感と好奇心をかき立てるのだ。
さらに、物語を彩るのは個性豊かな家族たち。特に注目すべきは、酒豪一家であるクムジュの家族。父ジョンス（演者キム・サンホ）は、麦茶のふりをしてビールを注ぎ、長女ヒョンジュ（演者チョ・ユニ）にさりげなく手渡すという、まるでスパイ映画のような“隠れ飲酒”テクニックを披露する場面も面白い。
こうした日常のユーモアが随所に盛り込まれており、シリアスな空気の中でもクスッと笑える演出が光っている。
主演を務めるのは、少女時代のメンバーとしても知られるチェ・スヨン。彼女はこれまで『あなたが願いを言えば』などで確かな演技力を見せてきたが、本作では禁酒に葛藤するクムジュを、コミカルかつリアルに演じ、女優としての新たな一面を披露している。
一方、クムジュの初恋相手であるウィジュンを演じるのは、映画『エクストリーム・ジョブ』などで人気を博したコンミョン。禁酒を貫くミステリアスな男性を、柔らかな雰囲気とクールな眼差しで表現しており、物語に深みを与えている。
恋と酒と素面のバランス。その狭間で揺れる人々の心情を描いた『禁酒をお願い』は、ロマンスドラマの枠にとどまらず、人間関係の複雑さや再出発の勇気を描くヒューマン・ストーリーでもある。
かつて親しかった2人が、過去の思い出と向き合いながら、新しい関係を築こうとする姿は、視聴者の胸に優しく沁み渡る。
恋愛に“しらふ”で向き合うことはできるのか？ そして禁酒がもたらすのは別れか、それとも新たな絆か？ そんな問いを抱きながら、クムジュとウィジュンの物語を見届けたくなる1作だ。
文＝大地 康
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