韓国ドラマや映画に親しんできた視聴者にとって、チョン・ホジンの顔は、安心感とともに深く印象に残る存在である。
1960年9月9日に生まれたチョン・ホジンは、韓国プロレス界の伝説的存在であるチョン・ギュドクの息子として知られる。しかし、彼はその名声に甘んじることなく、自らの実力で演技の世界に足跡を刻んできた。1983年にタレントとしてデビューして以来、40年以上にわたって第一線で活躍し続けている。
そのチョン・ホジンは、現在Netflixで配信されている『君は天国でも美しい』で、天国支援センター長と閻魔大王の2役を演じている。
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チョン・ホジンの最大の魅力は、その卓越した演技力にある。ロマンス、スリラー、ホラー、コメディー、ヒューマンドラマ、さらには時代劇に至るまで、あらゆるジャンルにおいて異なるキャラクターを自然体で演じ分けるその表現力は、まさに熟練の技といえる。
中でも特筆すべきは父親役における存在感であり、「国民の父」と称されるほど、親しみと信頼を集めてきた。彼が演じる父親は、決して理想化された人物ではない。迷い、苦悩しながらも家族を思い続ける等身大の姿が、多くの共感と感動を呼んでいる。
2017年に放送されたKBSドラマ『黄金の私の人生』では、家族思いな父親ソ・テスを演じ、視聴者の涙を誘った。繊細な感情の揺れを丁寧に描き、家庭内の葛藤と愛情をリアルに表現した演技は高い評価を得た。
続く2020年の『一度行ってきました』では、小児科医ソン・ナヒ(演者イ・ミンジョン)の父ソン・ヨンダルを演じ、複雑に絡み合う家族の関係を温かくも現実的に描き出した。
チョン・ホジンの演技の奥行きは、現代劇にとどまらない。サスペンスドラマ『怪物』では、マニャン派出所の所長ナム・サンベを演じ、緊張感と人物の内面を見事に表現。鋭さと哀愁をにじませる演技で作品に厚みを与えた。
また、時代劇『朝鮮弁護士』では、K-POPグループVIXXのエンが演じるユ・ジソンの父ユ・ジェセ役として出演。厳格さと人間味を併せ持つ人物像を描き、重厚な存在感を放った。
プライベートでは2人の子を持つ父でもあり、公の場で家庭について語ることは多くないが、その落ち着いた佇まいや誠実な姿勢から、家族への深い愛情がにじみ出ている。共演者やスタッフからの信頼も厚く、現場ではその人柄の良さが評判となっている。
数々の演技賞に輝いてきたチョン・ホジンだが、そのキャリアは華やかな脚光を浴びるというより、誠実で丁寧な積み重ねによって築かれてきたものだ。どんな役であっても、そのキャラクターに魂を吹き込み、視聴者の心を揺さぶる力を持つ。
総じて、チョン・ホジンは「名脇役」という枠には収まらない存在である。彼が画面に登場するだけで、物語に深みと説得力が加わる。まさに韓国演技界を支える柱のような俳優であり、今後もその姿に多くの視聴者が安心と感動を覚えることだろう。
文=大地 康
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