今や韓国女優の世界でナンバーワンの評価を受けるキム・ヘス。時代劇では『シュルプ』(2022年)で壮絶な覚悟を持った王妃を演じて大評判だった。
そんな彼女が自分のキャリアで忘れられないのが、名高い悪女に扮した時代劇『張禧嬪 チャン・ヒビン』(2002年)である。キム・ヘスに転機をもたらしたドラマだ。
ただし、制作時にキャスティングで難航した。張禧嬪という歴史上のビッグネームを演じるのには、相応の格が求められたのだ。最終的にキム・ヘスが最有力候補になったが、やっかいな問題が残っていた。
実は、キム・ヘスが先に映画会社と契約を結んでいたのだ。そして、ドラマの撮影で1年間も拘束されることに映画会社が難色を示した。
ドラマを優先させた場合、映画会社から多額の損害賠償を要求される恐れがあった。話し合いが決着せず、一時は訴訟問題にまで発展しかけたが、最後はキム・ヘス側が契約金を返還してドラマ出演を許可された。
ここまでキム・ヘスがこだわった理由は?
「張禧嬪を演じるのが夢でした。実は私が小学生のときにも、張禧嬪のドラマが放送されていたのですが、とても印象的で、将来演じるならこの役と決めていました。張禧嬪は、俳優としてすべてをかけられるほど力のある女性像を持っています。だからこそ、一生に一度あるかないかの機会を逃したくなかったのです」
熱望していた役に決まって、キム・ヘスは全身全霊を傾けた。
「張禧嬪はそれまで悪女としてのイメージが強かったのですが、今回のドラマでは描き方が違います。身分差別を乗り越えようとする姿勢が強い女性になっています。もちろん、国王を誘惑するためにライバルを陥れたり陰謀を駆使したりしますが、それは生きるための手段だったと理解してください。このように積極的な女性として表現された張禧嬪を演じられて、女優として本望です」
こう語るように、並々ならぬ意欲を見せたキム・ヘスは、撮影が始まると完璧に演じきって、ドラマを大ヒットさせた。宿願を果たした彼女は、それから大女優への道をひた走った。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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