時代劇『赤い袖先』は、イ・サンと宮女ソン・ドギムの至上の愛を情感豊かに描いている。その中で、イ・サンに扮したジュノ(2PM)への注目度はとても高かった。彼が兵役から芸能界に復帰した第1作であったし、朝鮮王朝後期の名君に扮するという話題性が際立っていたからだ。
【究極のベスト3】ウットリするほど世子の韓服が似合う俳優は誰か?
ジュノにしても、重圧がとてつもなく大きかったはずだ。すでにイ・サンに関しては、ドラマでイ・ソジンが、映画ではヒョンビンが演じていた。その評価をよく知っているだけに、比較されるのは目に見えていた。
それでも、ジュノは果敢にオファーを受け入れた。俳優にとって「絶対に逃したくない役」はそう何度もあるわけではないし、ジュノにとって『赤い袖先』は「絶対に挑まなければならない作品」だったのだ。
撮影が始まる前、ジュノは先輩俳優の表現力をあえて意識しなかった。自分なりの役作りを優先させたからである。
その際に心掛けたことは、イ・サンという人物の歴史的な背景を研究することだった。演じる役が偉大であればあるほど、その輪郭をしっかりと捉えておきたかった。
彼はイ・サンだけでなく、祖父の英祖(ヨンジョ)と父の思悼(サド)世子のことも調べて、実在の人物像を撮影の前に頭にしみこませていた。それは、堂々たる王族を演じるにあたり、とても重要な一歩になった。
撮影に入ると、素晴らしい手本がいた。英祖を演じるイ・ドクファだ。数々の名作時代劇で重要な役を経験してきたイ・ドクファは、顔の表情から細かい所作まで参考になった。
さらに、ジュノは自分の演技についてイ・ドクファから嬉しい言葉をもらった。尊敬する重鎮俳優から演技力を褒められたのだ。望外の言葉は、大きな自信をもたらしてくれた。
共演相手にも恵まれた。ヒロインのソン・ドギムを演じるイ・セヨンとは、素直に呼吸を合わせられて、その分、役に集中することができた。それは、イ・セヨンとの共演に幸せを感じるほどであった。
このように、主役カップルの相性がとてもいいという時点で、『赤い袖先』は傑作への道筋をはっきりと見せていた。
それでも、長い撮影を通して困難なシーンがたくさんあった。
一つは英祖がイ・サンを厳しく叱責する場面だ。英祖は次期国王のイ・サンに期待すればするほど、ことあるごとにきつく応対した。それをイ・サンはどう受け止めるのか。ジュノにとっても、正念場となる演技だった。
しかし、心配は要らなかった。窮地に陥る場面でもイ・サンの不屈の精神をジュノは力強く演じきっていて見応えがあった。
もう一つは、ソン・ドギムがイ・サンの愛情を受け入れない場面だ。国王の求愛であれば問答無用で応じなければならないのに、ドギムは無条件で従う女性ではなかった。
それに対してイ・サンはどう対処すべきなのか。こうした場面でも、ジュノは自分の感情を客観視できるような仕草でイ・サンの度量の広さを表現していた。
ときには、ドラマの中ではジュノの緊張が細かく感じられる演技もあった。しかし、それはマイナスではない。人間の情のこまかさを表わす効果も見せており、まさに、彼が「人間」イ・サンを演じた証(あかし)でもあった。
ジュノは『赤い袖先』で百想芸術大賞・テレビ部門で最優秀演技賞を獲得した。彼自身が切望した受賞であり、最大の栄誉を受けた根拠が『赤い袖先』のあらゆる場面に刻み込まれている。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
前へ
次へ