5月29日に兵役から戻って芸能界に復帰したチャン・グンソク。彼はこれから新しい作品に取り組むわけだが、今までのキャリアを見れば特に印象的な時代劇に主演している。
それが、2016年3月から6月まで韓国で放送された『テバク~運命の瞬間(とき)~』だった。
第1話の冒頭の場面。雪が強く降るなかで、成人したテギル(チャン・グンソク)が、反乱を起こす李麟佐(イ・インジャ/チョン・グァンリョルが扮している)と厳しく対峙していた。
このときのチャン・グンソクの演技は迫力があった。
「今までとは違う」
多くの視聴者がそう思ったことだろう。
何が違ったのか。一言でいえば「覚悟が備わっていた」ということだ。
「この『テバク』で評価を得られなければ俳優をやめざるをえない」
そんな切羽詰まった“背水の陣”でチャン・グンソクは『テバク』に挑んだ。ドラマでは、凍えるような寒さの中で精悍な表情を見せていたが、そのときに感じられた強い意志は、チャン・グンソク自身の決意の表れだったのだ。
このように、彼が覚悟を見せつける場面が『テバク』には随所にあった。
たとえば、第4話のエンディング。テギルの父親が息子を守るために命を落とし、それを契機にテギルは生まれ変わり、蛇に必死に食らいついて野人のように生きていく。
まさに極限状態に置かれたテギルをチャン・グンソクは体当たりで演じた。かつて「ラブコメの貴公子」と呼ばれた華麗な姿はない。
むしろ、ドロくさくて粗野だ。しかし、そんな姿をさらしてまで、チャン・グンソクは『テバク』に賭けていた。
最終的に『テバク』の放送が終了したあと、チャン・グンソクは次のように感想を述べている。
「作品を通して、私が一体なぜ俳優を続けているのかという理由を見つけ出すことができました」
この言葉を聞くと、チャン・グンソクが『テバク』を通して得たものがどれだけ大きかったかを実感する。
(文=康 熙奉/カン・ヒボン)
前へ
次へ