現在、NHKで毎週日曜日に放映中の『100日の郎君様』や日本でも根強い人気の『チャングム』『トンイ』『イ・サン』など朝鮮王朝を描いた時代劇には、かならず王宮で国王を補佐している高官たちが出てくる。
彼らは、科挙に合格して出世したエリートであり、ときには国王に意見をして存在感を示した。
組織を見ると、行政の最高機関を議政府(ウィジョンブ)という。そこが実際の政治を動かしていた。
その議政府のトップが領議政(ヨンイジョン)だ。数多い官僚の最高峰であり、今でいえば総理大臣に該当する。この役職は時代劇にもよく出てくるので記憶している方も多いことだろう。
領議政の下には左議政(チャイジョン)と右議政(ウイジョン)の2人がいた。これが、今で言えば副総理に当たる。
以上の3人の品階は正一品である。つまり、これ以上の品階はないのだ。文字通り、領議政と左議政と右議政が官僚のトップ3と言える。
次に、議政府以外の主な官庁を見てみよう。重要なのは次の五つだ。
・承政院(スンジョンウォン/王の秘書役。特に王命の出納事務を担当)
・義禁府(ウィグムブ/王命に従って罪人を取り調べる)
・司憲府(サホンブ/官僚の不正を糾弾して風紀を守る)
・司諫院(サガウォン/王に諫言し、政治の非を指摘する)
・漢城府(ハンソンブ/首都の司法、行政、治安などを担当)
以上の中では、漢城府の役人が時代劇にはよく出てくる。
警察のように取り締まりに尽力するので出番も多いのだ。こうした官庁のトップは正一品から正二品の品階を持っていた。
そして、正二品以上の品階を持つ人が「大監(テガム)」と呼ばれた。これも、韓国時代劇によく登場する呼び方である。
いずれにしても、すべての官僚は国王に忠誠を誓っているのだが、中には一部の官僚が結託して国王に反旗を翻すこともあった。
それゆえ、国王を前にした御前会議ではよく官僚同士が言い争って紛糾した。朝鮮王朝ではそういう派閥闘争が多かった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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