Disney+「スター」で配信中のSBSドラマ『私と結婚してくれますか？』は、偶然と必然が重なり合う“契約結婚ロマンスコメディ”である。笑いとときめき、そして人生の痛みまでも丁寧に描き、人が「誰かと生きること」の意味を静かに問いかけてくる。
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主人公ユ・メリ（演者チョン・ソミン）は、デザイン会社を1人で立ち上げた才色兼備の女性。しかし、婚約者の裏切りと不動産詐欺という二重の不幸に見舞われ、信じていたものをすべて失ってしまう。
そんな彼女が、酔った勢いで応募した“新婚夫婦限定イベント”に当選し、最高級新居を手に入れるという奇跡が起きる。だが、肝心の夫がいないことに気づいた瞬間、その喜びは絶望に変わる。そこに現れたのが、偶然にも元婚約者と同じ名前を持つキム・ウジュ（演者チェ・ウシク）だ。
老舗製菓店の後継者であり、マーケティングのエースとして活躍する完璧主義のエリートだがその心には、幼い頃に両親を失った深い孤独が潜んでいる。
そんなウジュに対し、メリは思わず「私の夫になってくれませんか？」と頼み込む。こうして始まる90日間限定の“偽装結婚生活”が、本作の物語を動かしていく。
見どころは、現実にはあり得ない設定を極上のリアリティで成立させている脚本と、主演2人の絶妙な掛け合いにある。
冷静で理性的なウジュと、情に厚く不器用なメリ。最初はお互いを警戒していた2人が、日々のトラブルや秘密を通して次第に心を通わせていく過程が、ユーモラスでありながらも胸を打つ。
また、脇を固める登場人物たちも魅力的だ。ウジュを支える旧友、メリを見張る人物、そしてメリの元婚約者。それぞれの思惑が交錯し、恋愛や友情、過去の後悔など人間の複雑な感情が絡み合う。こうした“多層的な人間模様”が、単なるラブコメを超えた深みを生んでいる。
都会の高層マンションを舞台にした“仮の新婚生活”も、映像美の見せ場だ。洗練されたインテリアや光の表現が、2人の距離の変化を繊細に映し出す。冷たい空間が次第に温もりを帯びていくその描写には、愛の芽生えが静かに重なる。
『私と結婚してくれますか？』は、嘘から始まった契約関係が、やがて真実の愛へと変わっていく物語である。偽装の中に見えた本音、傷の奥に宿る優しさ。誰かと生きること、信じることの尊さを、笑いと涙の中で描く。見る人の心をやわらかく包み込む、癒しのロマンスである。
文＝大地 康
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