Netflixで配信中の新作ドラマ『暴君のシェフ』は、料理と権力、そして恋愛が複雑に絡み合う異色の作品である。物語の発端は、現代で輝かしい実績を築いた一流シェフのヨン・ジヨン(演者イム・ユナ)が、突如として過去へと時を遡ることから始まる。
彼女がたどり着いたのは、絶対的な権力を握る朝鮮王朝の宮廷。そこで待ち受けていたのは、美食の世界において比類なき舌を持つと同時に、冷酷無比な支配者でもある王イ・ホン(演者イ・チェミン)であった。
イ・ホンは、権力者としての威厳を纏いながらも、季節や天候のわずかな変化で料理の味が揺らぐことすら見逃さない、圧倒的な味覚を持つ存在である。
その敏感さと偏執的なまでのこだわりは、王という立場を超えて1人の究極の美食家としての姿を浮かび上がらせる。そんな彼が偶然出会ったのが、未来からやって来たシェフのジヨンである。
イ・ホンが口にした一皿の料理は、彼の心を激しく揺さぶり、ジヨンを宮廷へと招き入れることになる。この瞬間から、2人の間には運命的な緊張と甘美な絆が芽生え、サバイバル要素をはらんだロマンティックコメディの幕が上がるのである。
王イ・ホンを演じるのは、近年注目度を急速に高めている俳優イ・チェミンである。端正な容姿と繊細な演技力を武器に、多彩な作品で印象的な役柄を演じてきた。彼が初めて本格的に視聴者の目に留まったのは『ハイクラス~偽りの楽園~』でのことだ。
HSC国際校の保護者であるナム・ジソン(演者キム・ジス)の秘書、アン・スンジョを演じ、端役ながらも存在感を発揮した。
その後『イルタ・スキャンダル~恋は特訓コースで~』では、ウリム高校2年ナム・ヘイのクラスメイトであるイ・ソンジェを演じ、『生まれ変わってもよろしく』では、キムチ煮込み店で働く謎めいた青年カン・ミンギを好演した。
そして彼のキャリアの転機となったのが、『ヒエラルキー』で演じたカン・ハという役である。チュシン高校に奨学生として転入してきた青年であり、学園内の格差と陰謀に巻き込まれていく主人公を熱演した。
誠実さと鋭い感情表現を兼ね備えた演技は、若手俳優の中でも頭角を現すきっかけとなったといえる。
今回の『暴君のシェフ』でイ・チェミンは、ただの青春ドラマの登場人物ではなく、王という絶対的な立場を背負う役柄に挑む。
強権的な支配者でありながら、美食家としての感性を持ち、さらに1人の男として愛に揺れる姿をどう表現するのか、俳優としての幅を大きく広げる試金石となるだろう。
これまで培ってきた繊細な演技力と存在感を活かし、イ・チェミンが王イ・ホンにどのような新しい命を吹き込むのか、多くの視聴者の期待が集まっている。
料理と権力、愛とサバイバルという異なる要素が見事に融合した『暴君のシェフ』。その中心に立つイ・チェミンの挑戦は、まさに次世代スターへの飛躍を象徴するものといえる。
◆『暴君のシェフ』概要
放送局:tvN (2025年)
出演者(役名):イム・ユナ(ヨン・ジヨン)、イ・チェミン(イ・ホン)、カン・ハンナ(カン・モクジュ)、チェ・グィファ(済山大君〔チェサンデグン〕)、ユン・ソア(ソ・ギルグム)
監督:チャン・テユ(『星から来たあなた』『根の深い木 -世宗大王の誓い-』『風の絵師』など)
脚本:fGRD
配信情報:Netflixにて独占配信中
文=大地 康
■【関連】イ・チェミン、“モテエピソード”も謙遜せず潔く回答!
前へ
次へ