『グッドボーイ』が描く静かな魂の叫び、パク・ボゴムが挑む役者としての真骨頂

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これまで爽やかなイメージで多くの視聴者に愛されてきたパク・ボゴムが、JTBCドラマ『グッドボーイ』で新たな挑戦に臨んでいる。演じるのは、かつてボクシング界で名を馳せた金メダリスト、ユン・ドンジュ。だが、スポットライトを浴びていたのは過去の話。今の彼は、警察の特殊チームで犯罪と真っ向から向き合う“闘う現場の男”である。

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額に流れる血、殴られて青く腫れた頬、汗に濡れた髪。そこに映し出されるのは、かつてのスターアスリートとは思えない泥臭く荒々しい姿だ。だが、その鋭くも静かな眼差しには、ただの暴力とは異なる、どこか透明な意志が宿っている。拳を振るう理由が怒りではなく、「誰かを守るため」であることが、その眼差しから伝わってくる。

ドンジュという人物は、単純な熱血キャラではない。正義感ひとつで語れるような男ではなく、過去の栄光と挫折、孤独と責任、そして希望と諦念が複雑に絡み合った存在である。パク・ボゴムはその繊細な内面を、セリフに頼らず、所作や沈黙、ふとした表情の変化で描き出していく。まさに「身体で語る」演技であり、役者としての地力が試される役柄だ。

『グッドボーイ』は、一見するとアクションドラマに見える。しかしその奥には、スポーツ選手としての挫折や、社会の矛盾、個人の再起という、極めてヒューマンなテーマが潜んでいる。かつてはメダルを追い、今は正義を追う。そんな登場人物たちの姿には、不器用ながらもひたむきな青春の残り香が漂う。

物語を彩るもう1人のキーパーソンが、キム・ソヒョン演じるチ・ハンナ巡査だ。彼女もまた、射撃の金メダリストという過去を持ち、今は警察官として生きている。

『グッドボーイ』
(写真=JTBC)

見どころ満載のストーリーに注目

外見はクールで非の打ちどころのないように見えるが、実力ではなく「見た目」で評価されがちな現実に、静かに葛藤している。キム・ソヒョンは、その揺れるプライドや抑えきれない不満を、わずかな視線の動きや息づかいで表現し、観る者の胸に響かせる。

さらに、ソ・ジョンヨンが演じるチョン・ミジャの存在も見逃せない。うどん店を営みながら1人息子を育てる彼女は、ドンジュにとって血のつながりを超えた“心の母”のような存在だ。荒んだ日々を生きる彼にとって、ミジャの存在は帰る場所であり、彼の中にある人間らしさの原点でもある。

『グッドボーイ』は、ただの勧善懲悪ではない。元アスリートたちが、警察という新たなフィールドで正義と向き合う姿を通じて、視聴者に「再生とは何か」を問いかけてくる。そこには、汗と血のほかに、痛みを抱えながらも前を向こうとする魂の叫びが詰まっている。

栄光からの転落、そこからの再起。その過程にこそ、本当の強さと美しさがあるのではないか。パク・ボゴムは今作で、“完璧なスター”という殻を破り、一人の人間としての深みを見せ始めている。

青春とは、決して眩しいだけの時間ではない。泥にまみれ、傷を負いながらも、もう一度立ち上がろうとする姿にこそ、人は心を打たれるのだろう。『グッドボーイ』は、そんな“真実の青春”を描いた、濃密なドラマである。

文=大地 康

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