チョン・イルは時代劇がよく合う俳優だ。何よりも、彼の韓服の姿は絵になっているし、抒情的な表情も王朝絵巻にふさわしい。そんなチョン・イルが出演した時代劇で真っ先に思い浮かぶのが『太陽を抱く月』である。
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チョン・イルは国王の座を弟に譲らざるをえない陽明君(ヤンミョングン)を演じていて、目を潤ませた表情がとても印象的だった。もともと端正なルックスを持っているが、涙を浮かべる場面では本当に素敵だった。そういう意味で、陽明君という役はチョン・イルの多様な表現力が十分に生きたキャラクターだった。
『太陽を抱く月』で評価を高めたチョン・イルは、『ヘチ 王座への道』で延礽君(ヨニングン)に扮していた。
当初から、延礽君は王族でありながら母親の身分がとても低かった、ということで不当にないがしろにされていた。れっきとした粛宗(スクチョン)の息子でありながら、あたかも王位継承の権利すら与えられないような立場だった。
しかも、王族ではない官僚たちですら、延礽君に対しては冷たい視線を向けていた。それだけに、チョン・イルは延礽君を演じながら哀しみの表情を浮かべることが多かった。そのうえで、彼は延礽君から英祖(ヨンジョ)へと成長する姿をしっかり演じていた。
さらに取り上げる時代劇は『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』である。チョン・イルが演じる主人公のバウは奇妙な稼業をしている。「ポッサム」という風習で寡婦を誘拐する仕事なのだ。
朝鮮王朝時代に女性は再婚が原則的にできなかったが、寡婦を布で包んで(包むことをポッサムと言う)誘拐し、そのうえで再婚を実現させる仕事を請け負っていたのがバウであった。
しかし、運命のいたずらが起きる。バウは人違いでファイン王女(クォン・ユリが演じていた)をさらってしまったのだ。責任を感じたバウは王女を必死に守ろうと奮闘する。そんな姿をチョン・イルが情熱的に演じていた。
『太陽を抱く月』から『ヘチ 王座への道』を経て『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』に至るチョン・イルの朝鮮王朝三部作。彼は時代劇で持ち味を存分に発揮する俳優だ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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