韓国時代劇の25年間を振り返る連載を10回にわたって掲載してきたが、今回が最終回になった。この連載で最初に取り上げたのは、1996年にKBSで放送が始まった『龍の涙』であった。
このドラマは、1994年に完成した『朝鮮王朝実録』のハングル版をテキストのように生かして脚本が作られていた。それによって、朝鮮王朝の建国時の出来事を克明にドラマで再現することができたのである。そして、『龍の涙』の大成功によって史実を生かした時代劇が主流になった。
それから25年が経過したが、KBSが2021年12月から放送をスタートさせたのが大河ドラマの『太宗イ・バンウォン』であり、チュ・サンウクが太宗(テジョン)に扮している。
太宗といえば、『龍の涙』でも主人公であり、ユ・ドングンが演じていた。その25年後にKBSが太宗を主人公にして朝鮮王朝の建国を壮大に描くということに不思議なめぐりあわせを感じる。
いま、再び骨太な朝鮮王朝のドラマを制作する時期に入ってきたのかもしれない。
振り返ってみると、この25年間は時代劇にとって様々な波動があった。
『龍の涙』や『王と妃』のように史実に沿ってドラマを作る時期が続き、そのあとは『宮廷女官 チャングムの誓い』『ファン・ジニ』『トンイ』のように歴史のはざまで必死に生きた女性を大々的に取り上げた時代劇がたくさん誕生した。
同時に、中国が高句麗(コグリョ)の歴史を自国の地方史に位置づけようとして韓国が反発し、高句麗の英雄たちを勇壮に描くドラマが隆盛となり、その流れで『善徳女王』も生まれた。
その一方で、史実から離れて創作的な要素が強い時代劇が脚光を浴びる時期も訪れた。その結果、『王女の男』や『太陽を抱く月』など架空の主人公が奔放にドラマを彩るようになったのだ。
そうした流れの中で『シンイ―信義―』『屋根部屋のプリンス』『麗<レイ>~花萌ゆる8人の皇子たち~』などのタイムスリップ時代劇が増えていった。最近では、現代のシェフの魂が王妃に乗り移るという『哲仁王后』が大人気となった。
このドラマを手始めに2021年には時代劇のヒットが続いた。そして、2PMのジュノが主演した『赤い袖先』が社会的なブームまで巻き起こした。ドラマの完成度も高く、2021年のベストワンに挙げる人も多い。
いま、時代劇は再びブームを迎えている。良質な時代劇がこれからもたくさん作られて、多くの人たちを楽しませていくだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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