『優しい男』『グッド・ドクター』『ケリョン仙女伝~恋の運命はどっち!?~』など、さまざまなヒット作でヒロインを務めてきたムン・チェウォン。
幼いときからずっと美術の勉強をしてきた彼女だが、演技に対する情熱が強かったという。中学生のときには、両親にも知らせずに俳優塾に通っていたこともあったらしい。
大学に入る頃は、本当になりたい職業は俳優ということを悟ったが、それまで守ってきた画家への夢を実現すべく、まずは洋画科に入学した。しかし、美術を勉強しながら、大切なものを忘れてきた気がした。結局は、大学を自退して演技の道を選んだ。
彼女のデビュー作は、2007年に放送された『走れサバ!』だが、このドラマは視聴率が低く、早期で打ち切りとなってしまった。そんなムン・チェウォンが次に出演したドラマが、2008年に放送されて高い視聴率を記録した時代劇『風の絵師』である。
彼女が演じた気高い琴妓(楽器を演奏する妓女)のチョンヒャンという役は、妖艶ながらも優雅な魅力を同時に持たなければならないキャラクターだった。
チャンヒョンを演じたムン・チェウォンはこう語っている。
「自分でもこんな難しいキャラクターを演じるとは知りませんでした」
出演が決まったあとに初めて自分の配役を知らされて、彼女はかなり緊張したという。そして、どうキャラクターをつくるべきなのかを深刻に悩んだ。
原作小説のチョンヒャンの存在は、ムン・チェウォンをもっと混乱をさせた。結局、彼女が選択したのは、撮影現場でシナリオだけに頼ることだった。これによって、テレビの中のチョンヒャンは、原作とは違った新しい女性に生まれ変わっていた。それは、ムン・チェウォンが女優として創意工夫に励んだ成果だった。
『風の絵師』でムン・チェウォンは、2008年SBS演技大賞でニュースター賞とベストカップル賞を受賞した。
普通はドラマで一番魅力的だった男女カップルが受けるベストカップル賞を、主役を演じたムン・グニョンと共に受賞したのだ。この事実を見ても、ムン・チェウォンの演技がいかに高く評価されたかがわかる。
『風の絵師』の後は、『華麗なる遺産』『お嬢さまをお願い!』『大丈夫、パパの娘だから』に出演している。
『大丈夫、パパの娘だから』で主演としての可能性をアピールしたムン・チェウォンは、2011年にトップ女優の仲間入りを果たすことになる運命的な作品と出会う。時代劇『王女の男』だ。
ドラマの序盤で「演技がぎこちない」という批判が寄せられていた彼女は、持ち前の積極的な姿勢で演技を改善して、中盤以降に高い評価を得るようになった。熱心なのはもちろんだが、何よりも天性の勘の良さを持った女優だといえるだろう。
しかし、ムン・チェウォンという女優がさらに大きく羽ばたくためには、解決しなければならない問題がある。
そもそも、女優というのは観客と監督によってたえず再創造されるものだが、現代美と古典美を同時に持ったムン・チェウォンの魅力は、むしろ時代劇と会ったときに何倍ものシナジー效果を発揮してきた。
なにしろ、各種の授賞式で彼女に栄光をもたらしてくれた作品は、すべて時代劇だったという点がその事実を反映している。
ムン・チェウォンがあれほど志向していた美術の道をあきらめて飛び込んだ演技の世界。本格派の女優として成長するためには、現状に満足せず、常に次のステップに挑むことが欠かせない。
韓国の視聴者や観客は欲張りだ。人気が出た俳優に次々と新しい魅力の付加を要求してくる。
せっかく登場した若くて魅力的な女優が、一時的に輝いたのちに散るのではなく、これからも長い間、私たちを魅了してくれることを心から願っている。
そんなムン・チェウォンは、2020年7月22日から韓国tvNで放送される水木ドラマ『悪の花』でイ・ジュンギと共演している。彼女のこれからに期待だ。
構成=大地 康
♢ムン・チェウォン プロフィール
生年月日:1986年11月13日生まれ
身長:168cm
星座:さそり座
デビュー年:2007年SBSシットコム「走れサバ!」
学歴:秋渓芸術大学西洋画科
☆主な出演作
『走れサバ!』(ドラマ、2007年)
『風の絵師』(ドラマ、2008年)
『華麗なる遺産』(ドラマ、2009年)
『お嬢さまをお願い!』(ドラマ、2009年)
『大丈夫、パパの娘だから』(ドラマ、2010年)
『王女の男』(ドラマ、2011年)
『優しい男』(ドラマ、2012年)
『グッド・ドクター』(ドラマ、(2013年)
『グッバイ ミスターブラック』(ドラマ、2016年)
『クリミナル・マインド:KOREA』(ドラマ、2017年)
『ケリョン仙女伝~恋の運命はどっち!?~』(ドラマ、2018年)
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