Netflixで配信中の韓国ドラマ『隠し味にはロマンス』は、食を通して心を通わせる人々の姿を描いた、温かくも奥深い成長ロマンスである。
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物語の舞台は、韓国・全州の片隅にひっそりと佇む看板のないワンテーブル食堂。そこに現れたのは、大手食品企業の後継者にして冷徹なレシピハンターだった。
本作の主人公ハン・ボムを演じるのは、実力派俳優カン・ハヌル。これまで真面目で誠実な青年役を多く演じてきた彼が、本作では効率と利益を最優先する冷酷なビジネスマン役に挑戦し、役者としての新境地を見せている。
ハン・ボムは、食品会社ハンサンの理事だが、料理にはまったく興味がなく、数字と成果を重んじる合理主義者である。
そんな彼が出会うのが、コ・ミンシ演じるモ・ヨンジュ。田舎のレストラン「ジョンジェ」を営む彼女は、素材と向き合い、手間を惜しまず心を込めて一皿を作る孤高のシェフだ。経営難に陥りながらも、自らの料理哲学を頑なに守るヨンジュの姿は、ボムの価値観を大きく揺るがしていく。
カン・ハヌルは、外面の冷たさと内面の孤独を繊細に演じ分け、徐々に心を開いていくボムの変化を静かな説得力で描き出す。その姿は、視聴者にとっても自らの価値観を見直すきっかけとなるだろう。
一方のコ・ミンシも、芯の強さと優しさを併せ持つヨンジュ像を自然体で体現している。彼女の手から生まれる料理は、まるで視聴者の心にまで温かさを届けてくれるかのようだ。
また、物語に軽妙さと温かみを添える存在として注目されているのが、ユ・スビン演じるシン・チュンスンである。
彼はクッパ店を営む家に生まれ、父の店を継ぐことに密かな誇りを持つ青年。一見チャラついた都会的な若者に見えるが、内には真面目さと実直さを宿すギャップのあるキャラクターだ。
ユ・スビンは、本作でもその持ち前の親しみやすさと自然体の演技で視聴者の心を掴んでいる。
コミカルでありながらも決して軽薄に終わらせない演技は、ドラマ全体に豊かな表情と深みを与えている。シン・チュンスンという役は、まさに彼の魅力が詰まったキャラクターといえる。
『隠し味にはロマンス』は、料理という題材を通じて、人がいかに他者と向き合い、変化し、心を通わせていくかを丁寧に描いた作品である。
華やかな演出ではなく、あくまで人物の内面に寄り添う静かな物語の中で、俳優たちの演技が光を放っている。
視覚でも聴覚でもなく、心で味わう作品。韓国ドラマならではの人間ドラマに加え、実力派俳優たちの魅力を堪能できる本作は、ゆったりとした時間の中でじっくり味わいたい一品である。
カン・ハヌル、コ・ミンシ、ユ・スビンの演技が交錯する『隠し味にはロマンス』に、ぜひ注目してほしい。
文=大地 康
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