韓国時代劇のヒット作品を振り返ったとき、絶対に忘れられない女優がキョン・ミリだった。彼女は本当にアクの強い役を印象的に演じきっていた。
『朱蒙』や『ホジュン~伝説の心医~』などにも出演していたが、キョン・ミリといえば思い出すのは『宮廷女官 チャングムの誓い』と『イ・サン』である。
『宮廷女官 チャングムの誓い』では、チェ尚宮(サングン)に扮して主人公のチャングムを徹底的にいじめ抜いていた。
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確かにチェ尚宮はどうしようもない悪役なのだが、キョン・ミリが演じると、とことん憎めないところがある。それは、彼女が美しい中にも品があるからだ。
それゆえ、キョン・ミリが演じたチェ尚宮は、根っからの悪人という雰囲気はなかった。自分の立場を守るために仕方なく悪に手を染めたという説得力を持っていた。
そこまで演じきれるのだから、やはりキョン・ミリの演技力はすごい。
『イ・サン』では、イ・ソジンが演じた正祖(チョンジョ)の母親に扮していた。
歴史的には恵慶宮(ヘギョングン)と呼ばれた女性だが、ドラマの中でキョン・ミリは夫を餓死事件で亡くしたという悲劇に耐えながら、息子が名君になっていく過程を厳しく見守っていた。
このドラマでも、キョン・ミリの様々な感情を抱えた表情を堪能することができた。
こうして韓国時代劇で独特の存在感を誇ってきたキョン・ミリだが、素顔の彼女はとても楽しい女性である。撮影現場でもよく冗談を言っているという。
そんなキョン・ミリは『宮廷女官 チャングムの誓い』のとき、一緒に共演している女優たちが楽になるように画期的な提案をした。果たして、それは何だろうか。
ここで問題となったのはカチェだ。これは朝鮮王朝の女官たちが頭に着けていたカツラのことだ。
昔はカチェというのは、重くて大きければそれだけ価値があると思われていた。撮影でもカチェはどうしても重くて大きくなってしまう。それゆえ、撮影時間が長くなると頭が痛くなるというのが女優たちの悩みだった。
そこでキョン・ミリは女優陣に呼び掛けて、撮影の時間が空いたらカチェをすっぽりと外してしまうことを提案した。それは今まで誰も言い出せなかったことだった。しかし、キョン・ミリが積極的に申し出てほかの女優陣も見習うようになった。
それゆえ、撮影所のあちらこちらで女性がカチェをすっぽり外して横になって休んでいるという光景がたくさん見られるようになった。
これは女優陣に大好評で、キョン・ミリは大いに感謝されたという。
こういうところでも、キョン・ミリはリーダーシップを発揮したのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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