韓国ドラマ『チュノ~推奴~』は、逃亡した奴婢を追いかけて捕らえる「推奴(チュノ)」を主人公にしたアクション時代劇だ。
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チャン・ヒョク演じる主人公イ・テギルは、かつて両班(ヤンバン)の家に生まれながら、ある事件をきっかけにすべてを失い、逃亡奴婢を追う推奴として生きることになる。
一方、テギルに追われるソン・テハ(オ・ジホ)は、かつて朝鮮最強と称された武将だったが、陰謀によって奴婢の身分へと転落した人物だ。
このように『チュノ』では、登場人物たちの運命が朝鮮王朝時代の身分制度と深く結びついている。では、テギルが追いかける奴婢とは、どのような立場の人々だったのだろうか。
ドラマの時代背景を理解するために、当時の身分制度について詳しく見ていこう。
朝鮮王朝時代の身分は、一般的に両班(ヤンバン)、中人(チュンイン)、常人(サンイン)、賤人(チョンイン)の4つに大別される。
両班と中人を支配層とすれば、常人と賤人は被支配層に位置づけられる。それぞれの身分によって、職業や生活、社会的な権利には大きな違いがあった。
まず、最上位に位置する両班は、文官を意味する文班と武官を意味する武班の総称だ。彼らは科挙試験を受けて官職に就くことができ、官僚になれば国家から土地や給与を与えられた。そのため、代々地主として権力を維持する家も少なくなかったという。まさに朝鮮王朝時代の特権階級と言える存在だ。
『チュノ』の主人公テギルも、もともとは両班の家に生まれた人物である。しかし、オンニョンの兄クンノムによる放火事件で一家が没落し、推奴として生きることになった。
続く中人は、両班と常人の間に位置する身分だ。外国語や医学、天文学、法律学などの専門知識や特殊技能を持つ人々が多く、両班を補佐する役割を担っていた。
中人も官僚になることは可能だったが、官職には一定の制限があり、高い地位に就くことは難しかったとされる。
ここからは被支配層となる。
常人は、農業や工業、商業などに従事する人々を指し、その大部分を農民が占めていた。彼らは国家に租税を納め、軍役などの義務を負っていた。さらに、地方官などによる搾取に苦しむこともあり、厳しい生活を強いられる人々も少なくなかったという。
こうした状況に対する不満が高まり、常人たちが団結して反乱を起こすこともあった。その代表例として知られるのが、19世紀に発生した「洪景来(ホン・ギョンレ)の乱」だ。
そして、身分制度の最下層に位置していたのが賤人である。
賤人にはさまざまな職業や立場の人々が含まれていたが、その代表的な存在が奴婢(ノビ)だった。
奴婢は国家に所属する公奴婢と、両班などの個人に所有される私奴婢に分けられ、主人のもとで労働に従事していた。とりわけ私奴婢は主人の財産として扱われ、売買や相続の対象になることもあった。
自らの意思で自由に生きることが難しく、過酷な境遇から逃れようとする奴婢も少なくなかったという。実際、1484年には国家に仕える公奴婢約45万人のうち、約10万人が逃亡していたとする記録も残されている。
また、朝鮮王朝時代の法典『経国大典』では、逃亡した奴婢をかくまった者にも罰則が定められていた。こうした逃亡奴婢を追跡し、捕らえることを生業としているのが、ドラマ『チュノ』に登場する推奴師(チュノサ)だ。
なお、朝鮮王朝時代の身分制度は、1894年の甲午改革によって法的に廃止された。『チュノ』で描かれる追う者と追われる者の関係も、こうした厳格な身分制度を知ることで、より深く理解できるだろう。
文=森下 薫
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